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フジテレビ『オールスター合唱バトル』編曲者対談|まーびろが挑んだ20声の衝撃と、木島タローが掲げる「一億人が歌う国」への夢

木島タロー、まーびろ
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フジテレビ『オールスター合唱バトル』編曲者対談|まーびろが挑んだ20声の衝撃と、木島タローが掲げる「一億人が歌う国」への夢

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12月22日にフジテレビ系で放送された『オールスター合唱バトル7』は、「ミリオン再生合唱団」をはじめ4チーム同時優勝という異例の事態になりました。今回は番組史上初メンバー兼アレンジャーとして参加した「ミリオン再生合唱団」のまーびろさんと、番組のスタートから監修・アレンジ・指導を担当してきた木島タローさんの対談をお送りします。ただ取材の部屋に入ると、まーびろさんの様子がおかしいようで……。

「木島先生」との対談に、まーびろが崩壊寸前!?

まーびろ うわぁ~!(頭を抱える)

──どうしたんですか(笑)。

まーびろ いやもう、今日は朝からテンションがおかしくて。だって木島タローさんとの対談ですよ?

木島 いやいや、いち大学講師だよ(笑)。

まーびろ 「いち大学講師」? いやいや!

──落ち着いてください(笑)。そもそも今日はどういう気持ちで臨んでるんですか?

まーびろ そもそも『オールスター合唱バトル』っていうのは、木島先生が、合唱の編曲を担当しているということで、第4回かな、出演させていただいた時に「なんだこの人! すごすぎるだろ!」みたいな。アレンジのクオリティもそうだし、引き出しの多さもそうだし、とんでもないことをしているなと思ってたんですよ。そこに今回、「ミリオン再生合唱団」の編曲の依頼をいただいて「できんのか?」みたいなところから始まったんです。最初は、「まあ、できるかな」っていうテンション感だったんですけど、この期間を通して2曲を完成させるのでもう精一杯だったんですよ、本当に。木島先生はこの何倍担当しているんだと考えると….本当にとんでもないことをしているっていうのが身に染みたんです。そんな状態で、今日ここに来ているって感じなので、本当にヤバい人が隣にいる状態です。とんでもないことをしている超人がいるっていう。どういう精神状態でやっていたのかとか、気になることが多くて、もういろいろ聞かせていただきたいです。なるべく冷静でいようとは思いますが。

──では一番、その核心を突くであろうところからまずいきたいんですが。今回、まーびろさんが編曲された「ミリオン再生合唱団」の2曲、『Soranji』と『愛をこめて花束を』を聴いて、木島さんはどう思われましたか?

木島 よかったですよ。よくここまでやってくださったと思って。アカペラのアレンジをする方だというのは知っていて、僕の周りでアカペラをやってる人間たちもまーびろさんの名前は知っていたし。ただ、合唱の編曲ってちょっと違うもので、この番組も普通の合唱ともまた違うし、それをあの舞台に挑戦してくるというのは、えらい大変なことだと、思うんですけど、見事に調整してきてくださったなっていう印象でしたね。だってあんなアレンジ、他でやることないですよね?

まーびろ (激しくうなずく)

木島 ですよね。他ではやらないことのためにここに挑戦してきたわけで。あの番組って「異種格闘技戦」じゃないですか。もういろんな人たちが出てくる。この特別なリング用の編曲をしたってことなので。そういう意味では、よくここまで調整してくださったなって思って見てました。

──特に1曲目、『Soranji』での20声に関しては、どう思われましたか?

木島 20声と言っても大枠、サビのところとかは四声か、多くて五声ぐらいのところにまとめているものの、各人、一人一人の役割というか、「仕事分け」を書いてるんだと思うんですよね。ここのセクションではこの人が違う役割をやるみたいなことを書いてると思うんですけど、僕はその考え方ではやってないので、だから率直に言って、時間かかっただろうなと。

まーびろ (激しくうなずく)

木島 例えばおせち料理みたいな重箱の中を見た時に、中を細かく分けて入れてあるものが、全部一つ一つ手作りの料理、みたいな印象なんですよ。この一品も、この一品も手作りしたんだろうな、みたいな。そういうものを見る印象でしたね。たぶんアレンジにあたっての考え方がスタート地点から全く違うので、だからこそ結果的にあの舞台用のアレンジができてくるっていうのがすごいなと思って。要は『合唱バトル』だから、合唱の考え方でアレンジができてるんですよ。言ってみれば、それとは違う舞台に挑戦してもらって、あの成果だったので、すさまじいことだなとは思いました。実際、すごく時間がかかったんでしょう?

まーびろ 鬼のようにかかりましたね。その20本が違うラインとはいえ、確かに基本軸は四声、五声で進行してはいるんですけど、でもその20人の特性を理解するというところに、まず大半以上の時間をかけましたね。「本当にこの人はこのパートで生きるのだろうか」とか、その人にどのパートを割り当てると一番伸び伸び、生き生きと舞台で力を発揮できるかっていうのを考える時間が、一番かかったかなというのはありますね。大枠のアレンジよりもたぶんそっちの方がかかったと思います。

──先日、「ミリオン再生合唱団」メンバー5人で行われた座談会では、一人一人のSNSやYouTubeを見て考えたとおっしゃってましたよね。逆に言うと、木島さんは1チームにそこまで時間をかけることはできないですよね?

木島 できないですね。今は少なくなってはきましたけど、まだキャスティングが全部決まってなくて、男女比も分からないのにアレンジをスタートしなきゃいけないということもあるんですよ。例えば「某合唱団」が初めて出場した時は、男女比がまだ確定できないというので、三声で作って、真ん中のパートを男性が歌っても女性が歌ってもいいっていう形の音域で書き始めたんですよ。男性の高い声の人と女性の低い声の人がおおよそどっちでも歌えるように。でも、それだけだと厚みが足りないところも出てくるから、各パートの中をちょっと二声ずつに分けて広がりを出すところとかを作って、最終的にどういう合唱団になっても対応できるようにしたり。その時は1曲目のアレンジが終わる頃にメンバーが確定したので、2曲目はちゃんと四声で書けたんですけど。キャスティングが決まってない状態で書くというのはけっこう「あるある」なんですよね。

まーびろ そうですよね。でも大変だ……。

木島 だから僕はどっちかというと、出来上がってるものに対してどの人が合うかと考えるというか、そう考えざるを得ないんです。でも、出場を重ねて慣れてきた合唱団については、「あの人はここだろう」っていうアタリがつけやすいところはあるんですけど。だいたい毎回、半分以上の合唱団は、キャスティングが決まる前に書き出してると思いますね。

──そうしないと間に合わないということですよね。

木島 そうです。逆に言うと、急なキャスト変更があったり、いろんなことで急きょ変更になったりするので、柔軟性がないと対応できないんですよ。だから作る苦労だけじゃなく、そういう調整とか不可抗力の事態とかがどんどん起きても対応できるようにってことですよね。余白をちゃんと持たせるというか。その時に対応する力はもちろん必要だなと思うんですけど、それこそまーびろさんこそ今回、大変だったんじゃないですか?

まーびろ どういうことですか?

木島 「ミリオン」にはアカペラのフィールドの人たちがけっこういるじゃないですか。僕が担当する合唱団の大半は、番組にキャストの皆さんが来た時点で「合唱って何?」状態なんですよ。そもそも慣れてない状態で入ってくるから、「こちらが合唱の先生です」って言われたら、僕の言うことを聞いてくださるんですよ。でもまーびろさんはたぶん、メンバーからは仲間だと思われてるから、メッチャ言われたんじゃないかと思うんですよね。

まーびろ メッチャ言われました!(笑)。もう「何じゃこれ?」とか「歌えねえよ!」とか。「これでもない」「あれでもない」みたいな感じでした。

木島 ですよね。「俺、本当にここ?」とか「これだと私、本領発揮できない」みたいなことも、仲間だと思ってるからメッチャ言われると思うんですよ。最終的にオンエアでは、「みんなでアレンジを仕上げた」って言ってたじゃないですか。でも元のベースを作ったまーびろさんにしてみたら、「そこも変えられちゃうの?」とか「ここが俺の根幹だったのに!」みたいなところでたぶん、ずいぶん我慢したんじゃないかなと思って。

まーびろ もっと言ってください。泣いてしまいますよ、そんなん言われたら(笑)。

木島 それは仲間だからこそ、でしょうけど。

まーびろ 確かにそこは感情として、一回封印してましたね。それは封印した状態で、とりあえず「ミリオン」がいい状態になることを一番の最優先事項として考えてたところがあるので。でも、あのメンバーがいたからあのアレンジができたっていう側面も絶対的にあるんですよ。それはそうだと思ってフォーカスしつつ……いやでも、やっぱ根本、作るのはメッチャ大変でした。しかも、コーラスアレンジだけじゃないじゃないですか。バッキング楽器の合わせ方というのもけっこう苦労するポイントというか。どう作っていけば一番ゴージャスに聞こえるか、みたいなところの塩梅とかはすごく難しかったですね。でも木島さんは、それ×7やってるんですよ。ちょっと理解できないのは、木島さんの1日って24時間ですか?

木島 1日は24時間ですよ(笑)。

まーびろ すごいな! いや、ちょっと考えられない。でもさっき言われたように、トラブルとかにも対応できるようにある程度余白を持って作る木島先生と、合唱団の一人一人にコミットして作る僕、というところで、うまい具合に違う見え方ができたのかなというところがあって。

木島 そうですね、構造としては。

まーびろ 加えて、今までの「ミリオン」が見せてきたものも踏襲して。だから「ミリオン」の見せ方に特化したという意味では、過去3回の6曲をメチャクチャ聴きました。

「感動した」と「すげえ!」という感想の違いとは……。

まーびろ 聴けば聴くほど、もう手数が多すぎて! 「こんなことしてたんだ!」っていうのがいっぱいあって。第4回の『浪漫飛行』はエグいぐらい好きですね。

木島 そうですか。

まーびろ 『浪漫飛行』でのセクションの移り変わりと、飽きさせない感じと。けど、実際に僕もメンバーの1人として歌ってたから分かるんですけど、メチャクチャ歌いやすいんですよ。何だろう……「費用対効果」っていう言葉で表しちゃうとアレですけど、歌う側としてはある程度パフォーマンスを出しやすい。その上、クオリティもちゃんとついてくるっていう、この構造関係でアレンジができるのがすごいなと思いましたね。

木島 あの……ちょっとした秘密みたいなものがあって。これを言っちゃうと、「また次回のバトルもぜひ!」みたいなことになると思うんですけど(笑)。僕は大学卒業してから米軍基地内教会の、ブラックゴスペルのコミュニティに入り込んで、そこで師匠になる人にも出会ったんですよ。彼について、ゴスペル・ミュージックのレコーディングとか、指揮とかそういうものを全部学んでいったんですけど、彼の部屋に行くとね、黒人のシンガーたちがレコーディングしてたりして。結局そこで、彼に3年間ついて回って、その後は米軍基地との契約の中で、ゴスペル礼拝の音楽をやってきて。そのゴスペル礼拝の音楽っていうのは、基本的に歌ってる人はアマチュアなんですよ。だけどミュージシャンはプロなんです。要は教会って、信者が多くないと保てないから。だから信者はたくさん欲しいんだけど、やっぱりいい音楽をやってる教会に人が集まるから、ミュージシャンはお金を出して雇うんですよ。ヘッドハンティングもあるし、毎週何万人も来るような大きな教会もあるし。そういうところって、ミュージシャンにはいいお金を払ってるんだけど、歌はみんな、歌いたい人たちが歌うんです。

まーびろ それは一般の方ってことですよね?

木島 そうですね、昼間は仕事を持っているような人たちです。そういう人たちが歌うから、歌いやすさはマストなんですよ。難しい音程を歌うっていう考え方がない。で、そこに複雑性を持たせてるのがバンドの方で。コーラスのハーモニーのスタイルは、進化が遅いんですよ。みんな、そんなに難しいことはできないから。教会に集まった人たちはみんなで一緒に歌うから。だけどバンドはプロだから、退屈しちゃうんですよ。8小節同じことを弾くと、次の8小節は違うことをしちゃうんです。だから、例えば一回目を、同じコーラスを歌いながら、一回目は「ドッタン、ド、ドッタン、ドッタン」ってやったのに、二回目は「ドン、バラバッバー、バッバーバッ、タラララ、ドンツッタッ」とか、もうミュージシャンの方で遊び始めてるんですよ。僕の師匠も、礼拝中にコーラスがもう繰り返し繰り返し歌ってる中でガンガン盛り上がってきて、同じところを繰り返す中で、バンドは退屈しちゃうから、(指を1本立てて)「one」ってやられたらパーン、ドンツタンタン、(2本立てて)「two」って言われたら、ダン、バンバン! (4本立てて)「four」だったら「パンパンパンパン!」みたいな感じで、その場その場でブレイクを作っていくんです。

まーびろ マジか!

木島 つまり、コーラスはドミソだったらドミソを歌ってるんですよ。その瞬間に、バンドは80年代にはCのコードを弾いてたのが、同じメロディーなのに90年代に入るとFを弾いて。そうすると結果的にCのコードを歌ってるコーラスと、Fのコードを弾いてるバンドのコンビネーションで、Fmaj9(Fメジャーナインス)が出てくる。これが、歌い手が歌ってることはシンプルなまま、だけど音楽は発展して新しくなっていくっていう構造なんです。これがあるから、あの『合唱バトル』の合唱っていうのは、一人一人ができるだけパワーを乗せられる、横の流れとして分かりやすい、叫びやすい音域で、和音を構築しながら、複雑さについての演出もしていけるんですよね。特に『合唱バトル』になると、歌が複雑だったら複雑なパートを持ってもらえる人に持ってもらうという構造になってくる。でも結局、アカペラの人たちって自分たちの声でできるだけ複雑なことをやろうとするから、逆にパワーが乗せにくい時があるんです。曲が終わった時に、ソウルが残る、パワーが残るという感じではなくて。やっぱり先行するイメージは技術なんです。「この人たち、すごいな」っていう印象が先行する。一方、合唱では「アマチュアがこれだけの声を出して、これだけのことを歌ってくれるんだな」っていう感じで、パワーが、終わった後の印象として残る。これは本質的に、やる人のマーケットが違う音楽だからなんですよ。アカペラの人たちは「声の力で何ができるか」と、いろんなことにトライしたくなる人たち。合唱は「技術的な高みじゃない、今歌ってるこの時間を気持ちよく終えたい」っていう人たち。そもそも音楽をやってるマーケットが全然違う人種だと思うんですよね。なので今回のフィールドでは、まーびろさんが合唱のフィールドに合わせてくれたというね。

まーびろ その最後に残る印象の話。メチャクチャそうですわ! すごく今、腑に落ちました。僕、最近の悩みがあったんですけど、それが一気に解決しました。パワー、ソウルが残るっていうところが一般視聴者の方に届いて、「『合唱バトル』で感動した」っていうコメントがメチャクチャ多いんですよ。『ハモネプ』の方は「すげえ!」っていうコメントが多くて。これか、この差なのかって。アレンジの面からこういうことを考えてたのかっていうのが今腑に落ちて、より言葉を選ばず言うと、「やっぱ木島さんヤバいな」って思ってます。もっとやりたくなっちゃうじゃないですか(笑)。いろんな複雑な音楽をやればやるほど、ちゃんと大衆音楽というか、落とし込みのところをしっかりやっているっていうのがヤバいですよ。

木島 複雑なことに憧れがないわけじゃないんですけど、それを誰にでもやらせられるわけじゃないですよね。例えばある大御所は、自分の感情で音程もリズムも揺れるジャンルから来てるから、そういう人にこっちで構築した音楽的に複雑な構造を提示しても、番組が終わった時にいい体験にならないはずなんですよ。合唱の一番の魅力というか、そうですね、合唱やってる時の一番の魅力っていうのは、そのパートを歌ってるのは一人じゃない、自分一人で責任持ってるんじゃないということなんです。みんなで支え合ってる。それが、合唱っていうものに参加する人たちにとっての魅力なんですよ。「いいよちょっとくらいのミス、声出せよ」って言い合える音楽というのが、一番の魅力だと思ってるので。

まーびろ なるほど!

木島 僕が通ってた中学、高校は普通の学校なんですけど、すごく合唱の盛んな学校だったんです。僕の6個下に星野源がいたり、同じ学年の隣のクラスにハナレグミがいたんですけど。とにかく合唱が盛んなんですけど、声のこととか発声のこととかは何にも教えないんですよ。ただ、教えた音程をみんな叫ぶだけ。でも、卒業式とかになると、オタクとヤンキーが肩組んで歌うんですよ、揺れながら。中には涙する連中とかもいて。その中には図書室女子と、このまま六本木に行くのかな?みたいなギャルとか、そういう人たちがみんな一緒に肩組んで歌うんですよ。それが僕にとっての合唱の初恋で。あれを一生やるにはどうしたらいいのかと思って。それで音楽大学に入ってみたら、他の人たちが知ってる合唱っていうのは、頭声合唱なんです。頭に声を当てる、喉に力を入れちゃいけないっていう、そういう合唱が主流で、みんな合唱ってそういうものだと思ってるっていうことを、大学に入って初めて知ったんですよ。「これじゃない。僕が知ってる合唱はこれじゃない」って思ってて。それで卒業した後に、僕のあの初恋の合唱に一番近かったものが、ゴスペルミュージックだったっていう。ただ、ゴスペルミュージックは教会音楽なんで、みんなが「宗教音楽なんだな、これは」「宗教イベントなんだな」って感じ始めるにつれて、ゴスペルブームって終わっていっちゃったんですね、日本では。でもみんな本当に地声合唱に憧れたんですよ、ゴスペルブームの中で。みんながやって地声で集まって、シンプルな歌を繰り返し繰り返し叫んで歌うような形。「あれいいじゃない」って日本人みんなが思ったんです。それはたぶん、合唱教育以前に民謡とかお祭りとかでみんなやってたわけじゃないですか。その記憶を、宗教じゃなくてもできるっていう、あのスタイルをなんとか人生かけてやっていきたかったんですよ。

まーびろ 「みんなが参加できる合唱」ですね。

木島 そう。「あんな声で歌わなきゃ」じゃなくて、みんなが「ここに参加したい」って思えるような合唱を、僕は「パワーコーラス」って呼んでて。そのパワーコーラス型の合唱っていうのを誰か、何とかやっていかなきゃいけないって思ってたら、学習指導要領も変わったんですよ。今は「頭声」って言わなくなって、「曲に合った発声、曲種に応じた発声で歌うように」って変わったんですよ。

まーびろ 木島さんが変えたってことですよね?

木島 僕が変えたんじゃないです(笑)。だけど世の中がちょっと変わっていったんですよ。

まーびろ いやでも、その一つの起因の人ですよね?

木島 いやいや、学習指導要領がそう変わったのは平成29年のことなので、僕はその後押しを受けた側です。僕も自分のチームで何とかそういう合唱をひろげようとしていた中で、『合唱バトル』が日の目を当ててくれた。『こういう合唱でもいいんじゃないの?』っていう日の目を、初めてこのパワーコーラス型の合唱に当ててくれた。これが『合唱バトル』だと思ってるんですよね。だから多くの人が「この合唱なら私もできるんじゃないか」って思ってくれるきっかけになってくれればと思ってるんです。

まーびろ いやぁ、それはすごいな。すごいな、すごいな、すごいな。ちょっとすごいな。ちょっと時間ください。すごいな、メチャクチャすごいな。

──大丈夫ですか(笑)。

まーびろ いや僕も、アカペラをやってくれる人を増やしたいなと思っていた時期もあるんですよ。今はちょっと難しいかもなと思っちゃうところもあるんですけど。やっぱり技術、技術になって、専門分野すぎることが多いので。でも確かに、「やりたいな」とかやれそうだな」っていう感覚は大事ですね。一般の方に思ってもらうのは。

木島 僕が高校の時にアカペラブームがあって、TAKE 6も流行ったんですけど、僕の周りでアカペラに興味あった人間でも、TAKE 6は誰もやりたがらなかった。絶対できないから。楽譜も作れないし、たぶんご当人たちも楽譜作ってないんじゃないかな。でもみんな、ロッカペラはやりたがったんですよ。ロッカペラはできそうだから。

まーびろ できそうですね(笑)。

木島 そう。でも、本当はそんなことないんです。本当はものすごい訓練をつんで、素晴らしいパフォーマンスと一緒にやってるんだけど、この「できそう感」っていうのが、人が夢中になる理由なんです。できないとしても、できそうな感じだから手をつけるんです。でも今、世の中で合唱って言われてるものの最高峰って、みんな完璧に同じ声を出してるんですよ。合唱コンクールなんかを見ると、僕にはマスクメロンを並べられて、「どれが一番いいメロンか」って聞かれてる感じなんです。それはちょっと分からない。「でもちょっと網目が違うんだよ」とか言われると、「そうなのかな」と思うぐらいで。それはそれでものすごい音楽文化なんだけど、普通科のみんなが「やろう」って思えるものじゃない。でも合唱って、本来人間全員がやるものだと、僕は思ってるんです。

──人間全員! 急にスケールが(笑)。

大プロジェクト始動? 目指せ、「1億人が歌う国」!

木島 イギリスの王立研究機関が、一時間合唱をする前と後とで、参加した人たちの免疫ホルモンの量を調べたんです。それが論文になってるんですけど、明らかに免疫ホルモンの量が違う。「歌い終わった後、ストレスホルモンの低下と免疫ホルモンの増加が顕著に見られたので、研究を継続することにしました」っていう論文があって。要は人間って、集団で歌うと健康になる生き物なんですよ。そういう機能が、もともと備わってるんだと僕は思うんです。だから結局、誰もが「これをやってみたい」って思えるような合唱こそ、合唱という音楽が出すべき結論なのかなと思ってて。

まーびろ すごいっす! ただ「できそう」の中で、ある程度クオリティを持っていくのってメチャクチャ大変なことじゃないですか?

木島 でも幸いなことに、合唱バトルの各合唱団には個性があるんですよ。最初から、カラー付けが強いんです。だからある程度プッシュしてあげると、皆さん強調するところはあるので。「ミュージカル合唱団」なんか魔改造されちゃってますからね。伊礼彼方さんとかに。

まーびろ あの人はすごいですね、ホントに。

木島 ある日レッスンに行ったら、主旋律を歌ってなくて、今回の『瞳を閉じて』も、一部主旋律を歌ってないところとかあるんですよ。テナーとベースだけになって。「そこは主旋律を歌わないんですか?」って聞いたら、「木島さん、木島さんの書いたテナーは素晴らしいから、テナーを出させてください」って言われて。全然メロディーじゃないのに、そうおっしゃるなら……となって。「サビはやっぱり2回じゃないか」とか言って、1回増やしたりしてますから。

まーびろ いや、マジかー、すごいな(笑)。やっぱりそういう方々から、僕とかからは絶対出てこない発想とか出てきますもんね。違うフィールドでやってるからこその経験値というか。

木島 「ものまね合唱団」とかも、ソロでどんなアクションするかは最終的には読めなかったりするし、Mr.シャチホコさんも僕が書いたのとは違うものを歌ってたり。「ここのインパクトを聞かせるために、ここで足をズバン!って踏み出そうよ」みたいな話をしてて、。それに対して、「踏み出す位置はこっちにしないと分かりにくくないですか?」とか言ったり、そういうサポートをしながら。

まーびろ それを7チーム。すごい……。いや、考えただけでちょっと、もう、想像を絶してますね。

木島 「ものまね合唱団」は第5回の時に、「まずみんなが何をやりたいか、どう生かしたいか、それを話し合ってから合唱の練習に入らせてください」という希望が出て。分かりました、やってみてくださいって言ったら、丸3回がミーティングだけで終わっちゃったんですよ。残り、ラスト三回で追いついて、歌は何とか完成まで行きましたけど、やっぱ点数は振るわなくて。たぶん「ミリオン」は今回、それをやったんじゃないですか?

まーびろ それは事前にやりました。練習期間に入る前、まだ何もない状態の期間を1~2ヵ月ぐらい取ってもらったんですけど、そこでメチャクチャやりましたね。話し合いと「こういうアレンジが欲しい」っていうニュアンスの揃えと。そこは本当にみんなからもらいました。ただペルピンズがリーダーで、彼らは「ミリオン」結成の前から出てるじゃないですか。「最強ボーカリスト合唱団」で。だから経験値が一番高いので、こういうアレンジが欲しい、こういう風に作りたいっていう、ある程度KAZ君の頭にあるものをもらった上で、そこに僕の色を追加していって、「はい、これどうですか?」みたいな。

木島 それでどんどん変わっていく。「言う方は言うだけだからね」って思わなかったですか?

まーびろ いつも思ってます(笑)。でもそこは、違う経験値を持った人たちからいろんなことを言っていただけるってことで、上乗せしていく感覚でしたね。

木島 でも、その構造的なものとか「いや、そう簡単に言うけど……」って言いたかった時もあるんじゃないですか?

まーびろ メチャあります!(笑)ここを変えたら、こっちも変えなくちゃいけないっていうバランス感覚が……とか。

木島 「ここにそれを入れちゃったら、こっちも変えなきゃいけないんですよ」っていうのもそうだし。

まーびろ そうです、そうです! このラインは後ろの方に取っておいたんだけど、ここで使いたいんだったら、もっとこっちはゴージャスにしないとねとか、そう、展開のアヤみたいなところなんですけど、たぶんそれを言ってしまうと、みんなからの発言が出てこなくなるじゃないですか。それもマイナスというか、やっぱりそこに宝が眠ってる可能性がありますからね。それを引き出してうまくまとめるっていうところに注力した感じでした。練習期間とかは、僕はほぼ何も言わなかったです。

木島 そこは、どうやってるのかなって思ったところだったんですけどね。僕は自分が指導する前提だから書けるフレーズがあるんですよ。「ここはこういう風に歌ってください」って指導をすれば、この感じでも形になるだろうと。楽譜を見ただけだと、何が起こるのかよく分からないんだけど、「歌い方としてこうだから」っていう指示を入れることを想定して書いてる。でも指導とは別枠でアレンジするのって、責任の取り方が難しくないですか?

まーびろ 難しいです。でも結局、最後の結果が振るわなかったら、100%アレンジのせいだと思ってやってました。そのニュアンスの詰めとかは、僕の楽譜をもう百何曲と歌っているおかのやともかという人間がいまして、彼女はもう譜面を見ただけでニュアンスが取れるんです。そういう子がいたっていうのは、メチャクチャでかかったですね、僕としては。「ここはこういうニュアンスで書いてくれてると思うんだけど、全体で合わせるとなったら、こっちの方がいいんじゃない?」みたいな提示をしてくれるので、それをもう全員でやってました。確かにそう考えると、全員でやっていたっていうところはありますね。指導じゃなくて、自分たちが思ったことの発言を寄せ集めて、その中でのベストアンサーを出して、じゃあそこはそうしようって全員で作る感じでした。

木島 そういうことの結果、解散しちゃうアカペラグループって多いじゃないですか。

まーびろ はい、メチャメチャ多いですね。

木島 やっぱり「誰かのピッチが違うから合わないんじゃないか」って話になりやすいし、白熱してくると言い方を選べなくなる時もあるし。だから、もしそれが「ミリオン」の内部で起こってるんだったら、エラい大変なことをやってるんだなと思って。オンエアでも。少しそういう空気の場面が流されていて、「そうだよな」と思ってたんです。

まーびろ そう、「指導者が欲しかったな」と一番思ったのはそこですね。「もうこの人の言うことについていく」っていうのが一番簡単というか、分かりやすい構造というか、ハレーションが起きない構造だと思うので。でもそれを譜面として一つにまとめなくちゃいけないので、最後、そこの回収の段階が一番大変でしたね。アレンジするよりも。第二稿以降のアレンジが、もう一番大変でした。

──まーびろさんは今回の譜面を持ってきてくださってるんですよね。

まーびろ はい、これです。(と、譜面を取り出して木島さんに見せる)

木島 噂は聞いてましたけど……すごいな、これ。

まーびろ もう、意味分かんなくなってきますよね。

木島 譜面に漢字を入れてるんですね。

まーびろ 入れました。言葉というところを意識した時に、読み仮名とかも含めて、景色とかもちゃんと言葉として入れたくて。

木島 これ、バージョンアップの時の刷り直しが大変じゃないですか?

まーびろ そうなんです! 毎回パートを入れ替えて、ずーっとやって20人分書き出して……みたいな。

木島 紙だらけになりますよね?

まーびろ ホントに、資源がかわいそうでした(笑)。ただ愛情を感じるというか、やっぱり譜面は紙にするといいですね。最近はデータ文化になってますけど、こういうのもいいんだなって思いますね。

──今回、「ミリオン」は初めて木島さんのアレンジから離れて、自分たちでアレンジからやるという方法を選択しました。木島さんの立場からすると、そういうチームが現れるのはいいことなわけですよね?

木島 そうですね。僕の夢は、「一億人が歌う国」なんです。誰もが、仕事の終わった後にどこか歌う場所を持ってる。もしかしたらチョコザップみたいな感じで、会社帰りにちょっと寄って歌っていく場所を持っている、みたいな。そういう社会が来ることになったら、僕が全部アレンジすることはできないので。もちろんみんな好みがありますからね。デスメタルを合唱したい人も中にはいるかもしれないし、そうなったら自分たちでアレンジもするという人たちが増えてくることで、日本中に、そういう場所が立ち上がる可能性がある。そう思ったら、やっぱり『合唱バトル』も、最終的にはいち個人の音楽センスを超えて、現場みんなの創造の場であって欲しい。ただ、矛盾するようですけど、『合唱バトル』を見て参考にしてもらいたいのは、みんなが「歌ってて楽しい」と思うためには、けっこうアレンジの工夫が必要なんですよ。「音としてカッコいい」という結論に行き過ぎると、みんながやりたいって思える合唱からちょっと離れてきちゃうこともある。そういう意味でモデルの提示というのはやっていきたいなと思いますね。ロッカペラみたいに「これなら俺たちもできそうじゃん」とか、「こういうアレンジにすればみんなでこんな感じで歌えるんだ」っていうアイディアは見てもらいたいと思ってるし、僕自身の役割として、それをやっていくのが自分の喜びかなと。それを、僕が過去にした合唱への初恋、オタクとヤンキ-が肩組んで歌う、あの合唱。あのビジョンを「一億人が歌う国」のヒントに翻訳していく。それが僕のライフワークかなと思ってますね。

まーびろ カッコいい! まずいな、人間力まで差がついてきてる……。

木島 まーびろさんも僕と一緒に、誰もがみんな歌う国の実現を目指していきませんか? そのためにも『合唱バトル』はいい素材だと思うんですよね。かつて『ハモネプ』が起点になって、大きな大学のあちこちにアカペラサークルがある、みたいな文化を作ったわけじゃないですか。合唱も、この番組を起点にいけるんじゃないかな、その文化作りというところで。各大学に、こういうパワーコーラス型の合唱をやる団体が普通にできてほしいですよね。そういう文化、一緒に作ってみません?

まーびろ いや、アリですね。メチャクチャ面白いと思います。(同席したスタッフに)エイベックスにも、ちょっとお願いしてもいいですか?(笑)

木島 一緒にやりたくなっちゃいますね。

──そのお話が広がると、すごく面白い現象が生まれそうですよね。いつか、またこの続きができたらと思います。ありがとうございました!

撮影 長谷英史

【まーびろ】

“唯一無二のコーラスアレンジャー”

数々のシンガー/グループ/コンテンツへのアカペラ・コーラス編曲を手掛け、その総再生数は1億再生をゆうに超える。

近年はアレンジ業に留まらず、フジテレビ系「ハモネプハイスクール」/「全国ハモネプ大リーグ」のアドバイザーや、2025年夏放送のアカペラを題材にしたアニメ「うたごえはミルフィーユ」への参画等、メディアへの出演やサポート、グループプロデュースや音楽作品のコーディネートにも着手し活動の幅を広げている。

YouTube:https://www.youtube.com/c/MAVICHANNEL0201

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――― ――― ――― ――― ―――

【「muchoo」について】

エイベックスの音楽系YouTuberに特化したエージェンシー。

音楽に”夢中”なクリエイターがより活躍できる環境を提供するとともに、彼らから生まれたコンテンツを通して、多くの人々がより一層音楽に”夢中”になれる世界を目指します。

公式サイト:https://avex.jp/muchoo/

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記事情報

高崎計三

ライター

高崎計三

1970年2月20日、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年より有限会社ソリタリオ代表。編集&ライター。仕事も音楽の趣味も雑食。著書に『蹴りたがる女子』『プロレス そのとき、時代が動いた』(ともに実業之日本社)。