翻訳
ウェイクボードのレジェンド・プレイヤー、高岩“MATT”正人を父に持ち、今や世界で活躍するプロウェイクボーダーの高岩汐音さん。普段の練習場所である荒川の水上で華麗なトリックの数々を披露していただいただけでなく、その活動や将来の展望についてもいろいろとお聞きしました!
生まれた時からウェイクボードが友達! 小学生で「当たり前じゃない」と気づいて……

──今、数々のトリックを実際に見せていただきましたが、すごいですね! もうウェイクボードと一体という感じですが、やはりお父さんの高岩正人さんがレジェンド選手ということで、物心ついた時には当たり前にウェイクボードとともにあったわけですよね。
高岩 そうですね。生まれた時からずっと、ウェイクボードの人生でした。小学校の2~3年生ぐらいで、それが当たり前じゃないということに気付いて。「あれ、ウェイクボードやってるのって、別に普通じゃないんだな」って(笑)。
──ですよね(笑)。
高岩 当時、小学校ではサッカーをやってたんですけど、「あ、ウェイクボードは特別だな」ということと「僕、けっこういけるな」ということに気付いたんです。それでサッカーをやめて、ウェイクボードに全部シフトしました。
──どういうところで「いける」と思ったんですか?
高岩 やっぱり、この環境ですかね。お父さんがこうやって船を所有して、プロスクールをやっていて。オフトレーニング用のトランポリンの施設もあるし、ウェイクボーダーとしては本当に日本で一番いい環境にいると思っています。
──トランポリンを使って練習するんですね。
高岩 はい。空中にいる時の感覚が、本当に同じなんですよ。ウェイクボードではボートが起こす波を利用してジャンプして、空中で技をするんですけど、トランポリンで飛んでいる時の感じと全く一緒で、波かトランポリンかという違いだけなんです。全員が全員やっているわけではないんですけど、空中感覚を補うために、トッププロの人たちはけっこう使ったりしてますね。
──小さい頃から練習を積んで実績も挙げて、活躍する舞台もどんどん大きくなってきていますよね。その中で意識も変わってきていると思いますが、自分の中での節目みたいなものはありましたか?

高岩 一昨年からアメリカでの活動も始めているんですが、初めて渡米した時に、周りの雰囲気の違いを感じたことですかね。本当に遊びじゃないというか、選手たちがアスリートなんだなというのを感じて、僕も「本気でやらないといけないな」と気が引き締まって。遊び感覚から、本気のアスリートとしてシフトしたタイミングだったなと思います。
──そこで、どういうところが変わったんですか?
高岩 ウェイクボードに対する考え方ですね。滑りに行って楽しむだけのウェイクボードじゃなくて、「練習」をしに行くというマインドに変わったと思います。それと、体のケアはけっこう変わりました。ストレッチだったり、オフトレーニングのトランポリンをしっかりやるようになったりというところで。
──今、このインタビューは東京都と埼玉県の間を流れる荒川の水上で行っていますが、今もメインの練習はこの荒川でされているんですよね?
高岩 そうですね。荒川は川幅も広いし、深さもあるし、水温も高めで、いい環境なんです。ウェイクボードの練習には、波が少ないフラットコンディションが適しているんですけど、荒川はその面でもいいですね。都心の近くで、こんなにコンディションがいいところは他にないと思います。
──勝手に海のイメージがあったんですが、そういうものなんですね。
高岩 でも、台風とかが来るたびにボートを移動して避難させたりもしてますよ。やっぱり自然の中なので、いつもフラットなわけではないんですよね。風が強い日もあるし、川なので潮の流れがあって、その潮の流れと風の相性が悪いと、海みたいな状態になったりもするし。自然の中でのスポーツなので、大会のコンディションも毎回変わってきたりしますね。
──その中で「トリック」と言われる数々の技を駆使するわけですが、そのトリックも日々、世界中でいろいろなものが生み出されたり、進歩していくものだと思います。高岩さんも、いつも頭の中にはトリックのことを考えている感じなんですか?
高岩 そうですね。僕で言うと、インスタグラムとかで他のライダーたちが自分たちの滑りの動画を上げているのを見たりして、「おっ、こんなのやってんだ、自分もトライしよう」とか、「あ、こんなのもできるのか」というのは、けっこうアイデアとして活用したりしてますね。
──全然違うところからインスピレーションを得ることもありますか?

高岩 動きが似ているので、スノーボードとかは参考にしますね。スノーボードとウェイクボードの一番大きな違いは、ロープがあるかないかなんですよ。自力で坂を下るスノーボードと、平面を引っ張られながら滑るウェイクボードの違いですよね。そういう点で、スノーボードではウェイクボードにはない動きをやっていたりするんです。そこを取り入れたりしているので、他のライダーたちから「個性的な滑りをするね」と言われることも多いですね。
──それから、お父さんと二人三脚でやってきているというところも大きいですよね。
高岩 はい、親子なので、自分の好きなように滑れるというのは大きいですね。全く気を使わないわけではないんですけど、自分の考えややりたいことを素直に伝えられますし、自然体で競技に向き合える環境だと思います。そういう意味では、本当に自分らしい滑りを追求できる、恵まれた環境だと感じています。
──反抗期とか、なかったですか?
高岩 反抗期はメチャメチャありましたよ(笑)。
──あ、そうなんですね。
高岩 ひどかったです(笑)。ウェイクボードをやってる時は特にですね。父がボートの運転をしてくれているので、船が曲がったりすると機嫌が悪くなったりとか。
──その反抗期のあまり、ウェイクボードから離れようと思ったことはなかったんですか?
高岩 いや、それはなかったですね。ウェイクボードは誰かにやらされているのではなく、自分の意思で続けている競技なので。父とぶつかることはあっても、ウェイクボードそのものが嫌になったことはありませんでした。
新しい技に挑戦したり、自分が成長していくことが楽しかったので、やめるという選択肢はなかったですね。
イベントを開催したりして、ウェイクボードをもっと盛り上げたい!

──現状、世間でのウェイクボードの認知度についてはどう思っていますか?
高岩 まだまだ、かなり低いですよね。それを盛り上げるためにもインスタグラムをやったり、イベントとかに出ていますし、将来は自分がイベントをやったりして、ウェイクボードをこれからどんどん盛り上げていけたらいいなと思ってます。スノーボードとかスケートボード、サーフィンとかの種目ではどういうイベントをやってるのかなというのを気にしたり、インスタグラムをどう活用してるのかとか、そういうところはけっこう参考にしてますね。
──今も世界で活躍していますが、例えば野球の大谷翔平選手だったり、ボクシングの井上尚弥選手だったりが世界で活躍する姿にも、刺激を受けるのでは?
高岩 そうですね。アスリートとしては本当にプロ中のプロの方々なので、そういうところはすごいなあと思うし、自分もそうなりたいなあと思ってますね。
──その中で、「この種目では俺だ」という自信やプライドも、もちろんありますよね。
高岩 はい。自信もプライドも、メチャメチャあります。一度海外に出ると、日本のライダーからは「アイツは世界でやってる」と見られるので負けたくないですし、その部分のプレッシャーもあったりはしますけど。
──その中で、当面の目標というと?
高岩 一番の目標は「ウェイクボードを盛り上げたい」ということなんですが、自分のアスリートとしての目標は、やっぱり世界チャンピオンですね。
──そこまでの距離は、今はどれぐらいだと思っていますか?

高岩 頑張れば届く距離にはいると思います。かなり頑張らないといけないですけど、届かない距離にはないと思っているし、届くという自信もあるので。
──いつ頃までにそこに到達したいと思っていますか?
高岩 ウェイクボードのライダーとしての寿命が、大体30歳までだと思っているので、そこまでの間ですかね。
──その活動の中で、今はエイベックスに所属しているわけですが、その部分での変化はありましたか?
高岩 周りから、すごく言われるようになったんですよ。「エイベックスに入ったんだね」みたいな感じで。所属したことで、周りからはさらにアスリートとして見られるようになった感じはあります。ウェイクボードの世界では、まだまだそういうところに所属してる選手は少ないというのもあって。
──先ほど、「イベントをやりたい」という話もありました。それはどういうイメージですか?
高岩 みんなにウェイクボードを見せて、知ってもらうイベントがやりたいですね。競技として競うイベントじゃなくて。ウェイクボードを知らない人にウェイクボードを触れてもらったり、楽しんでもらったりできるような催しをしたいなと思っています。自分とかプロの滑りも見てもらって、実際に体験もしてもらって、ウェイクボードがもっと身近になるようなイベントですね。
──確かに今はまだ、一般の人からはちょっと遠いイメージがありますよね。
高岩 でも実際は、全然近いんですよ。誰でも簡単に、手軽にできるんですよ、実は。ただ何となく、イメージとしてちょっと遠そうなスポーツと思われている方が多いので、その認識を変えたいですね。
──実際、ウェイクボードを始めたかったら、どうしたらいいんですか?

高岩 ウチ(「Garden Wake & Surf」)に来れば大丈夫です(笑)。体験とかもやっているので、気軽に始められると思いますよ。ウチは埼玉県川口市でやってるんですけど、遠い方は近場のショップを調べて来ていただければ、誰でもできます。
──ところでエイベックスでは、好きなアーティストはいますか?
高岩 浜崎あゆみさんとか、安室奈美恵さんも好きですね。今はヒップホップを聴くことが多いですけど。ウェイクボードのイベントをやる時には、音楽とかも絡められたらメチャメチャ面白そうですよね。好きな音楽をガンガンかけて、ボードとかスーツをビカビカ光らせて滑ったりしたら、ヤバいですね。
──いろいろ見えてきましたね(笑)。
高岩 そうですね。本当にウェイクボードを盛り上げたいというのが一番なので、話題になるようなことをやれたらいいですね。
──では改めて、これからウェイクボードを始めてみようかなという方たちにメッセージをお願いできますか?
高岩 ウェイクボードは、滑ってるだけでメチャクチャ気持ちいいスポーツだし、皆さんが思っているよりも全然手軽なスポーツだというところを、もっと知ってもらいたいです。
撮影 長谷英史

ライター
高崎計三
1970年2月20日、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年より有限会社ソリタリオ代表。編集&ライター。仕事も音楽の趣味も雑食。著書に『蹴りたがる女子』『プロレス そのとき、時代が動いた』(ともに実業之日本社)。