翻訳「医大生の双子ピアノユニット」という異色の活動で話題の兄ーズ。宗一郎、順一朗の2人はさまざまなコンクールで実績を積み、海外公演も経験。ボランティア演奏などの社会活動にも力を入れていて、「24時間テレビ49 -愛は地球を救う-」にも出演決定。7月22日にメジャー初アルバム『Circle』をリリースしたお2人に、いろいろとお聞きしました!
音楽だけでなく、エンターテインメントも追求したい

──今、お2人はぴったり並んで座っていますけど、普段からそういう距離感なんですか。
宗一郎 そうですね。でも、そんなにべったりくっついてるわけじゃないと思うんですけど。
──いやいや、めちゃめちゃ近いですよ(笑)。今回の取材にあたって兄ーズ関連のインタビューをいろいろ拝見したんですけど、お2人のご両親は本当にすごいですね。そういう実感はお2人にもありますか?
宗一郎 今思うと、僕たちの両親があの2人で本当によかったなと思ってます。そう思えるようになったのは高校2年生で最近の話なんですけど、両親的にはピアノを通じて僕たちの諦めない心を育てたかったみたいで、それがまだよくわかってなかった小学生の頃は、「俺も遊びたいな……」ってずっと思ってたんですよね。でも、高校2年生になってやっと自分から勉強をするようになったときに、すごい集中力で勉強に臨めたり、どんな状況でも冷静に判断する力が自分に備わっていることに気づいて、これは親のおかげなんだなっていうことがわかってからは、「うちの親は最強だな」と思うようになりました。
順一朗 確かに、小学生の頃はピアノの練習が大変で外遊びもあんまり行かなかったので、「遊びたいな」っていつも思ってたんですけど、両親がピアノを準備してくれて、防音室まで作ってくれたことがピアノの練習を本格化できたきっかけのひとつだったので、そう考えるとありがたいことが多いですね。
宗一郎 両親は全力サポートっていう言葉がそのまま当てはまるくらいで。とにかく妥協しないし、僕たちにピアノの可能性を見出してくれたし、ピアノのために揃えないといけない条件とか環境を全て整えてくれたことは、もう感謝しかないですね、本当に。
順一朗 あと、ご飯も美味しいよね。
──あはは! お2人は兄ーズというユニット名ですが、双子のデュオであれば“ツインズ”みたいな名前が浮かぶと思うんです。だけど、指定難病の「大田原症候群」を患っている弟さんや、妹さんの兄ということから名付けられた名前だと考えると、実際に演奏しているのはお2人ですが、兄弟やご両親の心とともに演奏している感覚なのかなと思いました。
宗一郎 まさにその通りで。兄ーズという名前は、僕たちは4人きょうだいの上2人なので、兄に複数形のズを付けたことで生まれたんですけど、僕たちのコンサートはいつも一体感を大切にしていて……一体感は僕たち家族のテーマでもあるんですけど、その一体感をみなさんと共有したいという思いもこめているんです。なので、僕らだけじゃなくて、家族一丸となって取り組んでいるという面はありますね。
──音楽家の中には、あくまでも音楽だけを聴いてほしいという方も多くいらっしゃると思うんですけど、お2人の場合、演奏はもちろん、自分たちの生き様も込みで楽しんでほしいという気持ちがあるんでしょうか。
宗一郎 小さい頃から母と一緒にコンサートへよく行っていたんですけど、小さかったこともあって知らない曲が多くて、僕的にはそれがちょっと大変だったんです。純粋に音楽を楽しむって難しいなって。だから、今自分たちがやっているコンサートでは、聴くだけじゃなくて視覚的にも面白くすることを考えているんです。音楽だけではなくて、エンターテインメントを追求したい。どうしたらお客さんが楽しんでくれるか、どこをとっても楽しいって言ってもらえるようにするためにはどうしたらいいか、という点を追求しているので、演出や衣装も含めて、エンターテインメントとして楽しんでいただきたいという思いはあります。
──でも、ピアノのコンサートには長い歴史があって、それを覆すというのはけっこう大胆なことですよね。

順一朗 確かに、歴史のあるピアノのコンサートはクラシックの音色を楽しむものだと思うんですけど、僕たちはクラシック以外のJ-POPやジブリ、ディズニーも好きなので、たくさんのジャンルの曲を弾けばいろんな人に楽しんでいただけるんじゃないかというところからコンサートを始めています。そこから次第にそういう「楽しんでいただきたい」という思いが演出やMCにも広がっていったんです。
宗一郎 あと、世の中に上手なピアニストはたくさんいるので、その中でも「兄ーズのコンサートに行きたいよね」と思ってもらうために、唯一無二を追求することがコンサートの歴史にとって新しくて斬新な概念を生み出す原動力になってるのかなと思います。
──なぜそこまで自由になれたんですか。2人にはピアニストとはこうあるべきだという固定観念にとらわれている雰囲気が全くないんですよ。
順一朗 いや、ピアノの触れ方はみなさんと何も変わらないんです。でも、今11歳の弟が病気を抱えて生まれてきて、それをきっかけに病院でのボランティア演奏を始めたんです。そこに集まってくれたのは、弟と年の近いたくさんのお子様。それまでコンクールで弾いてきたのはほぼ100%クラシックだったんですけど、全部クラシックだと子供たちはわからないよな、じゃあ知ってる曲をやろうよというところから、ドラえもんやアンパンマンのようなアニメの曲をピックアップするようになって、それがいろんなジャンルを弾くきっかけになりました。コンクールって勝ち負けの世界なんですけど、ボランティア演奏を始めてからは、お客さんに音を楽しんでいただきたいという気持ちが強くなっていきました。
──自己満足の演奏ではなく、聴いてる人たちに楽しんでもらうという環境に早くから身を置いていたからこそ、エンターテインメントを意識したコンサートを行うという発想になったんですね。
宗一郎 ああ、それは大いにあると思います。これまでは無意識でしたけど、いま、自分の中でつながりました。
母親のお腹の中から一緒に過ごした時間は、連弾ではこの上ない強み!

──ちなみに、好きなクラシックの作曲家はどなたですか。お2人とも違うんでしょうか。
宗一郎 僕はロマン期……ラフマニノフ、メンデルスゾーン、ショパンみたいな華やかな曲がすごく好きですね。あと、近現代も大好きで、コンクールのためにはロマン期をたくさん練習しなきゃいけないんですけど、いちばん練習したのは近現代っていうぐらい大好きです。
順一朗 僕もロマン期は好きです。曲にドラマがあるというか、起承転結があるから弾いてて楽しい。でも、宗一郎と違うのは、僕はどちらかというと昔の曲が好きなんです。バッハとかの時代は、音数は少ないんですけど、メロディも伴奏も複雑な動き方をしているので弾いていて心地いいんです。当時の楽器は強弱の差があまりつかないんですけれど、それでも音を伸ばす工夫が緻密にされているんですよね。計算し尽くされてるというか。
──そういった好みの差はあれど、連弾となると感覚や呼吸の面でお互いに寄り添っていないとうまく成り立たないわけですよね。
宗一郎 それでいうと、僕は歌うことが好きなのもあってピアノでも抑揚をつけるのが好きな直感タイプ。なので、連弾において僕がプリモ(高音パート)で順一朗がセコンドなのも、お互いの性格や好みと役割がマッチしてるからなんです。コンクールでも、ほかの人たちは最初の動きを決めてから揃えるんですけど、僕らは適当な感じで演奏に入ってもきちんと揃う。打鍵スピードとかのクセがお互いにわかるんですよね。喧嘩をしているときはズレるんですけど、基本的には本当にズレない。母親のお腹の中から高校3年生まで全く同じ時間を過ごしていたので、お互いの癖がわかるんですよね。だから、音楽的な好みは違うけど、連弾では強みになります。
──となると、ほかの連弾奏者からすると「双子はズルい!」という感じでしょうね(笑)。
宗一郎 そうですね(笑)。実際、コンクールでは僕ら以外にも兄弟や双子が多いです。
──へー! そして、お2人はピアニストを目指すのと並行して、弟さんの病気を治すために医者になるべく日々勉学に励んでいるという。2つの人生を同時に歩んでいるような、とんでもない密度の日々を送っています。
順一朗 弟が生まれたのは僕らが小学校3年生の頃で、弟を治したいという思いが自然と医師になることに向いていったような気がします。
──でも、これまではプロのピアニストではなかったわけで、今こうしてプロとして契約をした以上、ピアニストとしての活動に全力を注ぎながら、学生としても勉強を続けなければならないという状況になっていますよね。
順一朗 大学が始まってからは本当に忙しくて、僕はつい一昨日まで試験があったんですよ。それが終わってひと息つけるかと思ったら、来週からはツアーが始まるという状況で、すごく大変です。
宗一郎 想像以上に大変だなっていうのは今すごく感じてますね。
──ピアニストとしてのプロデビューはどうやって決まったんですか。

宗一郎 これはもう、本当にラッキーというか、運が重なった感じで。まず、両親から「コンクールに挑戦し続けなさい、1位を取ったら卒業していいよ」と言われたんですけど、当然1位はなかなか取れなくて。でも、高校1年生のときに国際コンクールで優勝することができて、ついにコンクールを卒業することになりました。コンクールは勝負の世界なので、みなさんに演奏を届けるというよりも、いかにミスをしないかということを意識していたので、コンクールを卒業してからは、自主企画でコンサートをやってみることで音楽を楽しむ方向にシフトチェンジすることにしたんです。そのために会場候補のホールを見学していたら、今の事務所の方から突然メールが来て、「僕たちとやってみませんか?」って。それですぐに意気投合して、トントン拍子に話が進んで契約したという感じです。初めてコンサートを開いたのは2年前の2月、高校2年生のときでした。
──そこから怒涛の勢いでここまで来ていると。この間には大学受験もありました。
宗一郎 初めてコンサートを開いたのはすでに受験の時期だったんですけど、開催に踏み切るまでけっこう迷いましたね。ピアノはいったんお休みして勉強に打ち込んで、大学生になってからデビューしてもいいんじゃないか、みたいな話にもなったりして。でも、無理してでもやったほうがいいんじゃないかという親からのアドバイスもあって、初開催することにしました。あれは頑張りどころでしたね。結局、高3の7月でいったんコンサートは終えて、8月に入ってからは猛勉強。でも、初っ端の模試では物理の点数が30点で、「これはヤバい!」と。そこからは、朝9時から予備校に行って、夜9時半ぐらいまで勉強して、家に帰ってご飯は10分、風呂10分。そして、そこからまた2、3時間勉強、みたいな。30点をとったタイミングで受験を諦めるという道もあったかもしれないんですけど、ピアノを通じて諦めない心を僕らは養ってきたので、「俺は受かる……!」って毎日自分に言い聞かせることができたし、それは親からの影響が大きかったと思います。
「小さな音の遊園地」を感じられるように意識したアルバム『Circle』

──そして晴れて2人揃って医学部に現役で合格し、今回フルアルバム『Circle』のリリースも叶いました。どんな気持ちですか。
宗一郎 プロというのはアルバムを出してこそっていう気持ちがあったので、そこに一歩近づけたといううれしさがあります。
順一朗 今回は自分たちで作曲した曲も入れるという新たな挑戦もしているので、より達成感がありますね。
──オリジナル以外の曲はどういう基準でセレクトしたんですか。

順一朗 僕たちのコンサートは様々なジャンルの曲を演奏するのがひとつの軸としてあるので、クラシックもジブリも洋楽も幅広く選んでいます。あと、僕らはメドレーで次々と曲が変わっていくのも好きなので、メドレー曲も入れました。作品全体としては、僕らのコンサートは、“小さな音の遊園地”をテーマにしているので、それがアルバムからも感じられるように意識しましたね。
──今作には「スラヴ舞曲」が収録されていますが、インディーズ時代の作品でも「ハンガリー舞曲」を演奏していますよね。お2人は舞曲が好きなんですか。
順一朗 大好きですね。舞曲を弾いてると心が躍ってくるんですよ。僕らがやってる舞曲はハイテンポで華やかな曲が多いんですけど、いつも意図して選んでるわけではなくて、「これなら曲を知らなくてもみんな心躍ってくれるんじゃないかな」って感じるものを選んだら舞曲だった、という感じです。
宗一郎 舞曲に初めて出会ったのはコンクールで、連弾の課題曲が舞曲だったことがあったんです。そこで「舞曲って面白くない?」と気づいて、自分たちのコンサートで披露する曲もそういうものを探すようになりました。
──作曲家としてはどんな方から影響を受けているんですか。
順一朗 勉強中によく聴いていて、この人の曲すごいなと思うのは久石譲さん。題名を見て曲を聴くだけで、その風景が思い浮かぶ。なんでこんなに綺麗なんだろうっていうところは僕たちも追求してますね。
宗一郎 今作に収録されているオリジナル曲も、久石譲さんにならってテーマやコンセプトを決めてからつくりはじめました。
順一朗 元気なのか、悲しいのか、そういう感情的な部分から決めて、そこから発展させて、どんどん具体的に詰めていきました。
──アルバムのラストを飾るオリジナル曲「Circle」は、家族や自分たちに関わってくれる人たちとの縁をイメージした曲なのかなと想像しました。

宗一郎 まさにその通りで。今回、昔を回想するような曲を作りたいよねって話になったときに、僕らが回想するとなると、これまでの生い立ち、親のサポートがあったこと、友人から支えられたこと、プロデビューしてみなさんがコンサート会場に来てくれたことで、そこから自分たちも学ぶものがあったし、これはみなさんへの感謝だよねって。みなさんとのつながりがあってこそ今の兄ーズがあるので、そういうつながりをテーマにしました。つながりって輪っかだし、音楽は世界をひとつにするものなので、「Circle」という題名にしました。そして、そのイメージに沿って曲を組み立てていく。たとえば、調はト長調がマッチするんじゃないかとかいろいろ考えましたね。
順一朗 結果として、「これだ!」と思える曲がつくれたので、僕ら的にはすごく達成感があるし、大満足の1曲になりました。
──メジャーデビューアルバムが完成し、今後、ピアニストとしてさらに活動の場が広がるのは喜ばしいことですけど、その分、医大生としての負担は増していくというジレンマが生まれますね。そのことについてはどう考えていますか。
宗一郎 1年生の去年と比べて、2年生の今年はやることがすごく増えたので、この調子で6年生まで増え続けることを考えると、なんとか時間を見つけてピアノを続けていけるようにしないといけないですね。
──でも、ピアニストとして独り立ちするのも大変なのに、そこに医師としての目標もあるとなるととんでもなく大変じゃないですか。
順一朗 大変です。本当に。
宗一郎 でも、ピアノは小学生の頃から基礎を作り上げてきた自負があるし、練習量は誰にも負けない自信があります。
順一朗 僕らはそれを「ピアノ貯金」と呼んでいるんですけど(笑)、今は学年が上がるごとに専門性が増していってさらに難しくなっていくので、それぞれに全力で熱量を注いで、二刀流で頑張っていきたいです。
撮影 長谷英史

弟を救うため医者とピアノの道を歩む双子の医大生ユニット・兄ーズ、本日7月22日に1stメジャーアルバム『Circle』をリリース!

現役医大生双子ピアノデュオ「兄ーズ」、7月22日に1stメジャーアルバム『Circle』発売&ジャケ写・新アー写解禁!7月30日からは東京オペラシティ、大阪など4都市を巡る夏の全国ツアースタート!

話題の双子の医大生ピアニスト "兄ーズ" 待望のミニアルバム「Little Piano Land」 配信・ミュージックカード本日リリース!

話題を呼んでいる双子の医大生ピアニスト“兄ーズ“7月30日にミニアルバム 「Little Piano Land」の配信とミュージックカードの発売でメジャーデビュー決定!

ライター
阿刀“DA”大志
1975年東京都生まれ。学生時代、アメリカ留学中にHi-STANDARDのメンバーと出会ったことが縁で1999年にPIZZA OF DEATH RECORDSに入社。現在は、フリーランスとしてBRAHMAN/OAU/the LOW-ATUSのPRや音楽ライターなど雑多に活動中。Twitter:@DA_chang