翻訳12月17日、メジャー初となるパッケージシングル「番」をリリースする3ピースバンド、カラノア。表題曲はTVアニメ『ガチアクタ』第2クールのエンディング主題歌で、バンド初のアニメタイアップとなっている。雄大(Vo、Gt)、樹(Ba)、かずき(Dr)のメンバー3人に、バンドの現在と未来、そして楽曲のことなどについてお聞きしました!
「3人体制になってからのカラノアは『バンドではないな』という感覚」(雄大)

──まず、ちょっと変な角度から話をお聞きしたいんですけど、今のカラノアにとって、サウンド面や精神性などにおいて、自分たちらしくないと思うのはどんなことですか。
雄大(Vo、Gt) らしくない……めっちゃ難しいですね。考えたらなんかありそうだけど……うーん、なんだろう……。
──それだけ考え込むということは、自分たちらしさというものをそこまで固めていないということなんですかね。
雄大 そうかもしれないですね。変化に壁を作らないスタイルでやってるので、「らしくないことをやってる」って自覚したことはあんまりないかもしれないです。
──なんでも自分たちのものにしちゃえばいいじゃん、みたいな?
雄大 大きく言うと本当にそんな感じかもしれないです。「もう、これやっちゃおう!」「オッケー!」ぐらいのテンション感で。
──ということは、3人ともどんなアイデアでもウェルカムだと。
雄大 特に曲作るときはほぼそうです。とりあえずなんでもやる、みたいな。
──最初からそういうスタイルだったんですか?
かずき(Dr) 基本的にはそうですね。メジャーデビューする前くらいに、「ライブを意識したロック寄りの音楽をやったほうがいいんじゃないか」など焦点を絞った制作をしていた時期もあったんですが、やっぱり、自由にやるほうが曲がイキイキするし、自分たちものびのびやれるし。で、今に至る感じです。
──雄大さんはもともと、バンドに憧れつつ弾き語りをしていたそうですが、今のカラノアは当時思い描いていたバンド像と比べてみてどうですか?

雄大 全く違うと言っていいかもしれないですね(笑)。悪い意味ではなく、全くの別物というか。17歳くらいの僕が思い描いてたのは、もっとゴリゴリのJ-ROCKでした。
──かずきさんと樹さんも、思っていたのと違う場所にたどり着いた感覚はありますか。
樹(Ba) 自分はJ-ROCKみたいなバンドはあまり聴いてこなかったんですよ。メタルとかそういう系の音楽が好きで。だから、そういう意味では昔やりたかったこととは全然違う方向にいってるのはあるかもしれないです。
雄大 メタルは全然違うよな、今のところ(笑)。
樹 どうにかどこかにねじ込んでほしい(笑)。
かずき 僕は今みたいな世界観重視な音楽はやりたかったことに近いかもしれないです。
──なるほど。話はちょっと遠回りしましたけど、カラノアはいい意味でバンドっぽくないんですよね。
雄大 確かに。本当にそうかもしれない。
──4人体制の頃はバンドらしさがあったと思うんですけど、今の3人体制になってからはもう、別人みたいな感じがします。そういう自覚はありますか?
雄大 ありますね。バンドではないな、みたいな。
──あ、そこまで言いますか。
雄大 はい。そうじゃない気がするよね?

かずき うん、曲も打ち込み系がかなり増えてきたし。ライブでもデジタルパッドを叩くことが増えて、ハイブリッド感があるというか。最近は全部を打ち込みにするんじゃなくて、生ドラムとうまく組み合わせてライブ感も意識してます。
雄大 それが意外とハマるんだよね。
──ライブで曲がよりよくなって育っていく感じ?
雄大 そうですね。「ライブ、めっちゃいいじゃん」みたいな(笑)。
──音楽集団、みたいな。
雄大 マジでそうかもしれないですね。
──それは、以前に比べて解き放たれたような感覚なんですかね。
雄大 去年の12月ぐらいに「MIREMIRE」という曲を出したあたりから解き放たれたのかも。あの曲から一気にどかんと広がっていった感じです。
──バンド然としていたものから徐々に特定の枠にとらわれなくなっているように感じるんですけど、これは自らはみ出していった感じなんですか。
雄大 自分らのような気はしますね。「あ、ここからなんでもできるようになっちゃう」みたいな。
──楽曲的には「MIREMIRE」がきっかけだったとおっしゃいましたけど、メンタルの部分では何かありましたか?
雄大 メンタルの変化が曲に影響を与えたというよりも、やりたい曲をつくったらメンタルが変わった、みたいな。
──自分たちがつくった曲に引っ張られて変化したと。「MIREMIRE」ができたときに、お二人もグッと引き寄せられる感じがあった?
かずき そうですね。「こういう打ち込み系もカラノアらしさの一つにできればいいな」って感じで、「じゃあ、自分もそれに順応していかなきゃな」って一生懸命取り組んだし、今年は僕にとってパッドとマジで向き合った1年でしたね。

樹 「MIREMIRE」は、元々エレキベースで弾く予定だったんですけど、レコーディング前日くらいに、「これ、シンベでもよくない?」ってことで自分でシンベに変更したんです。それがきっかけでシンベを買って、それ以降も使うようになりました。
──で、「おもしれえじゃん!」となっていった。
雄大 その頃から急に、曲だけじゃなくて、ステージ上の見た目も変わったよね(笑)。
樹 そうだね。どんどん物(機材)に囲まれるようになって(笑)。
かずき 増えていっちゃってね。
雄大 おもろいよね。
「雄大から届いた『番』のデモを聴いて、『これはすごい……!」と。てガツンときました」(樹)
──今年に入ってからは、リリースされる曲のBPMが徐々に上がり、メジャーデビューシングル「レイ」で一気にギアが上がってるように感じます。これはたまたま?
雄大 速い曲をつくろうっていうタイミングが続いてて。自分の中でちょっとしたブームみたいになってるんですよね。
樹 フィジカル的には恐ろしい(笑)。
──当初からメジャーは目標だったんですか?
雄大 いや、特にこだわりはなかったですね。
樹 ちっちゃい頃は、なんとなく「メジャーってすごい」って感覚があったけど、バンドをやり始めてからは、デビューできたらすごいけどっていうくらいで、別に特別な目標ではなかったです。
──今はどんな立場からでも発信できますもんね。
雄大 でも、いざメジャーデビューすると昔のことを思い出すというか。メジャーデビューって昔にテレビで聞いてた言葉だったから。
──具体的に、どんなところでメジャーを感じます?
樹 友達から「おめでとう!」って言われたりすると、「そういえば、メジャーデビューしたんだよな」って改めて思うことはあります。
かずき あと、メジャーデビューしてからなんだか親が優しくなった気がします(笑)。
──あはは! 親って、そういうわかりやすい変化じゃないと反応してくれないですもんね。そういうこと以外で、メジャーデビューがバンドにもたらしたものはそこまで多くはないんですね。とはいえ、TVアニメ「ガチアクタ」のエンディング主題歌は、メジャーだからこそ実現したことですよ。
雄大 このアニメはヤバいっすよね。めちゃくちゃ面白い。
──「ガチアクタ」は、Paleduskによるオープニング主題歌「HUGs」もかなりインパクトありましたよね。
雄大 あれは本当に素晴らしいですよね。
かずき 僕はジムに行くときに必ず聴いてます。ヘッドホンの音量マックスで。それぐらい気持ちが入るんですよね。
──でも、Paleduskに負けないぐらい、今回カラノアがリリースする「番」も、サウンド、歌ともにインパクトが強いと思いました。
雄大 作品を見終わった後のテンションをそのまま引き継げるようなそんなイメージしてました。
──どんなことを意識して作りましたか。
雄大 僕、普段からアニメをけっこう見るんですけど、自分が好きな作品がアニメ化されたときに、曲でガッカリしたくないってすごく思うんですよ。だから、自分たちの曲で視聴者の方をそういう気持ちにさせたくないって思いながら書きました。「これはないわ」って思わせたくなかった。だから、かなり客観的に書いた感じはあります。
──その分、自分に対するプレッシャーは相当大きかったんじゃないですか?
雄大 半端なかったですね。とてつもないプレッシャーでした。本当に大変でした。
──歌に関して、この曲に限った話ではないですけど、ものすごく韻を踏んでますよね。
雄大 めっちゃくちゃ踏みます(笑)。「Paradise」(今年7月リリースのEP『ネオンテトラ』の収録曲)あたりからやり始めてるんですけど、韻踏むのは大好きですね。もともとヒップホップが好きだし、口が気持ちいいんですよね。
──ダンスミュージック的な要素も強いサウンドにすごく合ってますよね。かずきさんと樹さんは、最初に雄大さんから届いたデモを聴いてどう感じましたか。
樹 「これはすごい……!」って。ド頭からパンチが効いてて、ガツンときましたね。
かずき 元の曲はけっこう前からあったんですけど、これは新しく書き直したものなんですよ。
雄大 そう、最初に出したデモは別のもので、そこから「せっかくだから新しいのをつくりましょう」って提案してもらって、今の形になりました。
──この曲に限らず、最近のカラノアの曲はリズムがかなり凝ってませんか?
雄大 僕、ベースとドラムが好きすぎて。特にリズムが好きなので、ついやりたくなっちゃうんですよね。
かずき デモの段階でドラムとベースはほぼ完成してることが多いんですけど、世界観重視の今のカラノアの楽曲は、ドラムとベースがタイトじゃないと一気にダサくなっちゃうんですよ。だからシビアにレコーディングするんですけど、デモがあがってくるのがレコーディング2日前で、フルができるのは前日で。
雄大 マジでそう(笑)。
かずき だから、当日になんとか曲に慣れながら、樹と2人で一緒に録ったりして。
樹 頭を抱えながら(笑)。
かずき しかも、曲を重ねるごとどんどん難しくなってるので、日々鍛錬してます。
──じゃあ、レコーディングの現場でちょっとしたアレンジを加えたり?
かずき そういうのもあります。あとは音色を変えたり。
──飛び道具が多く、サウンドが凝っている「番」のような楽曲の場合は特に音色が肝になってきますね。
雄大 音色がいちばん時間かかるんじゃないかな。
樹 ドラムはね。
かずき 音に関してはだいたい僕の中でイメージがあって、それを現場で試すという感じでしたね。でも、この曲に関してはちょっとトラブルがあって、スネアドラムの裏に張ってある響き線が切れてしまって、そのせいでドラムを録る時間がなくなってきて、「次のテイクで決めないとまずい!」っていうタイミングで録れたのがこれなんです。
──ギリギリまで追い詰められた緊張感のある場面で録ったものが採用されたんですね。ベースに関してはどうですか。
樹 レコーディングの前日、前々日くらいに曲があがってきた上に、自分でもいろいろと足し算していったので、自分で自分の首を絞めるっていう(笑)。
雄大 レコーディングのとき、「やるしかない」しか言ってなかったよね(笑)。
──レコーディングで成長していくっていう。
かずき 間違いなくそれはありますね。レコーディングするたびに勉強になる。
雄大 練習とは環境が違うから、マジで成長にはつながってる。
かずき しかも、録音したものを聴けるので、ああいうプレイをするとこういう音になるっていうのもわかりやすくて。
「ライブではけっこう曲をアレンジしてます。そのほうがお客さんも楽しいだろうし」(かずき)

──雄大さんは、デモの段階で曲を作り込んで2人に渡すんですか?
雄大 そうですね。土台だけはしっかりさせておかないと、自分で歌を入れるときにテンションが上がらくて(笑)。そんな状態で歌うの嫌だなって。
かずき けっこう完璧主義者なんですよ。
──曲中、カンカン鳴ってる部分があると思うんですけど、あれは何の音ですか?
雄大 何の音なんですかね?(笑)
スタッフ フライパンとか言ってなかった?
雄大 フライパンはまた別なんですよ。ゴングみたいな音も入ってるし……。
かずき いっぱい入ってるよね。ああいうのは自分で録ってるの?
雄大 自分で録ったヤツもあるんだけど、カンカン系の音が多すぎてどれがどれだか……(笑)。
──あのカンカン具合がインダストリアルロックみたいですごくカッコいいんですよね。今、スタッフさんから「フライパン」というワードが出ていましたけど、楽器以外のものも使っているんですか?
雄大 よく使います。自分の頭の中で想像している音は、あちこち探すよりも自分で作っちゃうほうが早いんですよ。
──あと、曲の終わり方がすごく不穏で、いきなり切れますよね。あれは最初からあったアイデアなんですか。
雄大 いや、なかったですね。「終わり方どうしようかな……」って考えてて、「あ、切っちゃおう!」みたいな(笑)。
──退廃的な世界観で徹底的に統一されたこの曲は、今のカラノアのひとつの到達点なのかなという気がしました。
雄大 本当にそうですね。
かずき カラノアには、「阿弥陀籤」、「ice」、「MIREMIRE」、「ねむ」みたいなふんわりとした軸があって、今回の「番』では、「阿弥陀籤」みたいなロック系のジャンルにおけるひとつの正解が見えた感覚はありますね。
雄大 新ジャンル感あるよね。
──この曲には強烈な色を感じます。最初にも話しましたけど、カラノアにはなんでも飲み込める懐の深さと、なんでも飲み込みたいという貪欲さがあるのかなと。そう言われてみて、どうですか。
雄大 圧倒的にそんな気はしてますね。
かずき ここで急にジャズが出てきたら、ちょっと大変だなと思いつつも、ひたすら練習してトライはすると思います。ジャズに限らず、ジャンルに縛られずにいろんなものを吸収していきたい気持ちは強いですね。
雄大 そっちのほうがシンプルにおもろいし。
──今、カラノアを突き動かしてる原動力は、やっぱり「音楽って面白い」という感覚なんですかね。

雄大 間違いなくそうですね。「おもろ!」の連続みたいな、それしかない。
──ここまで自由な音楽を奏でるようになると、ライブはどうするんですか?
雄大 けっこういい感じだよね?
かずき うん、打ち込みをそのままパッドで流すと本当にカラオケっぽくなっちゃうから、あえて生でやったり。この前、樹とも話してたんですけど、「Sugoroku」っていう曲を全部シンベでやろうかとか、サビ以外はエレキでやろうか、みたいにいろいろ話してて。
樹 どっちのパターンも練習してるよね。
かずき そんな感じで、ライブではけっこうアレンジしてやってます。そのほうが観に来てくださったみなさんも楽しいだろうし、音源とは違う、ライブならではの感じになるというか。スタジオで合わせてみたら、「お、いいじゃん」って。
──さっきも話に出てきましたけど、音源上でやることが増えてくると、ステージ上の機材もどんどん増えていきそうですね。
雄大 そうですねえ。どうなるんだろう。いつか僕の鍵盤が増えそうな気はしてる。
樹 俺、今度笛を買わなきゃいけない(笑)。
──そんな予定もあるんですね(笑)。
樹 「ピー!」って鳴らさないといけなくて(笑)。
雄大 めっちゃいいじゃん、羨ましい!
樹 それがもう、次のライブの楽しみで。「どこに置いとこうかな~」って(笑)。
かずき こういう感じでいろんな企みがあるんですよね。「今度のライブであれやってやろう」「やっちまおうか!」みたいな。
──こういった3人のわちゃわちゃ感がしっかり音に反映されてるんだと思います。「番」という強烈な楽曲が産み落とされた今、カラノアはどこを目指していくんですか?
雄大 楽曲面でいうと、まずはこの曲を超えないといけないので、今はそのプレッシャーと戦ってます。何回書いても超えられない。でも、ここを超えたらヤバいことになるっていう楽しみはありますね。
──ここまで来ると、さらに「何やってもいいじゃん」という感覚になりそうです。何をやっても自分たちならまとめきれるという自信も今はついてるでしょうし。
雄大 間違いなくそうですね。怖くもありますけど。
かずき デモが来るたびにヒリヒリしてはいますけど……でもやるしかないし、みたいな。
──一旦、頭を抱えて(笑)。
雄大 で、楽器を持つ(笑)。スパルタだな。でもよかった、(曲を)書く側で(笑)。
樹 書くほうが絶対大変だけど(笑)。
──個人的には、今後もっとエスカレートしてほしいですね。
雄大 やりたいっすね、行けるとこまで行きたい。中途半端が一番よくないですから。どうせ行くなら、とことんやっちゃったほうがいい。
──そして、ライブでは3人がステージに出る前から、機材でお客さんを威圧する(笑)。
雄大 やりたい!
かずき 1回しか叩かないようなでっかいシンバルとか置いてね。
樹 いい、それいい(笑)。見たこともない民族楽器とかね。「何あれ!?」っていうインパクトのために練習する、みたいな(笑)。
──今のカラノアは、そんな突拍子もないアイデアすら許容できる状態にあるってことですよね。
かずき 自由だよね。
雄大 やりたいことはいくらでもあるし、そこはみんな同じ気持ちだと思います。
撮影 堀内彩香

番
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ライター
阿刀“DA”大志
1975年東京都生まれ。学生時代、アメリカ留学中にHi-STANDARDのメンバーと出会ったことが縁で1999年にPIZZA OF DEATH RECORDSに入社。現在は、フリーランスとしてBRAHMAN/OAU/the LOW-ATUSのPRや音楽ライターなど雑多に活動中。Twitter:@DA_chang