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【ピコ太郎】「PPAP」10周年!エイベックスじゃなかったら10年は持たなかったピコ

    ピコ太郎
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    【ピコ太郎】「PPAP」10周年!エイベックスじゃなかったら10年は持たなかったピコ

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      来年、2026年8月に10周年を迎える「PPAP」。あの時の騒ぎを考えると「もうあれから10年か!」と不思議な感情が巻き起こりますが、その10周年に向けて、ピコ太郎が大企画を始動!その名も「Tottemo Release 80.8」。目玉は毎月数曲、1年間で合計80.8曲の楽曲リリース。8月25日には「Shin-Pen-Pineapple-Apple-Pen」を含む第1弾がリリースされました。「80.8曲って何?」「1年間で何が起こるの?」など疑問いっぱいで臨んだら、こちらから聞くまでもなくいろんなことを話し出すピコ太郎。そのマシンガントークを余すところなくどうぞ!

      こんなに続けられたのはラッキー。“ファーストワン”になれたのは本当にラッキーでしたぴ。

      ──来年の8月で「PPAP」が10周年になるということなんですね。

      ピコ太郎 はい。2016年8月25日にYouTubeにアップしたので、10年目に入ったという感じピコ。そこに向けてリリースしていくので、来年の10周年の頃には80.8曲、歌が増えてるということになりますぴ。

      ──どこからツッコんでいけばいいのかという感じなんですが……(笑)、まずそもそも、こうして10周年を迎えることになるとはという感じでは?

      ピコ太郎 いや、僕はずっと粛々と活動してるんですけども、「PPAP」という、自分でも変な言い方ですけど……こんな一発の当たり方はまずないというか、こういうのって、だいたいインターネットで2週間ぐらいのブームで終わるじゃないですか。それが10年経っても、まだこうしてCMをやらせてもらったり、海外のCNNとかでコメントできたりっていうのは、こんなの信じる方が無理ですよね。なので「本当にここまで来たんだな」とは思いますピコ。ピコ太郎としてはもう15年ぐらいやってるんですピ。

      ──今は特に移り変わりが早いですしね。

      ピコ太郎 しかもネットバイラル発信でやっていて、テレビ発祥とかではないのがすごいなと。いつも言うんですけど、ラッキーでしたぴ。今、YouTubeが20周年ということで、YouTube本社製作の記念映像でも扱ってもらったり、10年ぐらい経って一番脂も乗ってて勢いがあるんですピコ。始めた頃はまだ芸能人のYouTuberとかもほぼいなかったという、いい時代にハマったので、“ファーストワン”になれたような感じがしてて。“ファーストワン”ってラッキーで、一番オイシイんですピ。そういう意味では、10周年になったんだっていう感謝の気持ちと、新たなチャレンジということで、これを始めてみようと。でも実は、曲はもう3~4年前から作ってるんですピコ。

      ──あ、そうなんですね。

      ピコ太郎 ずーっと温めてる曲があって、どうせだったら最初はアルバムに100曲ぐらい入れたら面白いなと思って。あと、「10周年だから」じゃなくて「10周年に向けて」やるっていう人はあんまりいないなと思ったので、やってみることにしましたピ。「ここまでなると思っていたか」ということでしたけど、明日のことは分からないので、それを予想することは難しいんですけど、より難しいのはこれじゃないかなって思いますピコ。

      ──なるほど。

      ピコ太郎 ああいう風に世界的にバッと広がり、世界中を回り、10周年を迎えるって、あんまり自分は見たことないので。ただ、見たことないことはもう慣れましたピ(笑)。

      ──見たことないことが連続して起きた10年だったと。

      ピコ太郎 そうですぴ。しかも、ほぼずーっと変わらずやってたんですピコ。もちろん、最初の2016年、17年18年はあまりに異常でしたけどね。これはよくいろんなところで言ってるんですけど、最初に海外行ったのは台湾だったんですピ。その台湾で午前中40社、午後40社の取材を受けたんですね。もう3分刻みで。

      ──それはすごい!

      ピコ太郎 しかも、全部国が違うんですピ。インドネシア、フィリピン、中国、台湾があって、そこからベトナムが来て、何が来てっていう。だから「何語でいこうか」って言ってたぐらいで、あれが一番大変でしたピコ。そこから結局、曲もずーっとコンスタントに作ってて、いろいろCMにも使っていただき……という感じで来たので、「10周年か……」なんて思う気持ちもありますぴ。「そんなに経ったのか」っていうか、「ああ、時が経つのは早くて遅いな」と。アインシュタインが正解だったなというか、時は一定ではないんだっていう感じがしますピコ。

      ──今年2月にも小児がんのイベントを取材させていただきましたが、ああいう場で見ても普及の度合いがすごいですよね。本当に老若男女に浸透していて。

      ピコ太郎 ですよね。海外では、本当にみんな僕のこと、「PPAP」のことを知ってるんですぴ。これをどう伝えていいのか(笑)。自分で言っちゃうとあれですけど、本当に台湾とかでは街なかを歩けなかったぐらいで。フランスのエッフェル塔の前でも警察から注意されたんですピコ。

      ──そう言われても、ですよね(笑)。

      ピコ太郎 本当にみんな知ってくれていて、やっぱり知ってくれているからこそ……小児がん支援などをやっているピ。自分みたいに使えるものは使った方がいいんですピコ。すれっからしになるまで、もう歯磨き粉の最後まで使うっていう意味では、10周年目にインプットなのかアウトプットなのか、とりあえず最後まで出してみようということで。

      ──それが80.8曲、毎月リリースということですね。

      ピコ太郎 毎月最低5~7曲はリリースしますピ。そして、必ず何らかのミュージックビデオも作ります。でも、まあ本当に予算がないんですピコ。

      ──そうなんですか(笑)。

      ピコ太郎 はい。なのでその中でどう作っていくかっていうのが問題で。古坂(大魔王)さんの家で全てレコーディングして、ミックスしてマスタリングまでして、映像も古坂さんと最低限のスタッフで撮っているピ。編集も古坂さんがやっていて。こんな大きい会社にいますけどね。今の時代、きっとそれでも作れるなっていうことで、今回はちょっとAIを駆使してやってますピ。作曲も映像ももうAIとともにやってて、これを僕らは「愛(AI)とともに」って呼んでるんですけど。愛と共に80.8曲。本当は808曲やりたかったんですけど、それは無理だなと(笑)

      「808」へのこだわりと恩返し。でも「0.8曲」ってどういうこと!?

      ──「808」という数字が大事ということなんですね。

      ピコ太郎 ピコ太郎のシグネチャーサウンドであるリズムマシン「TR-808」、この808への恩返しがちょっと終わってなくて。あの曲以降、実は流行った曲には全部TR-808のカウベルの音が入ってるんですピコ。Creepy Nutsの「Bling-Bang-Bang-Born」もそうだし、YOASOBIの「アイドル」にも入ってるんですぴ。バイラルするたびに808が入ってるなっていうのはすごくうれしくて。もちろん意識してるかどうか分かんないですけど。で、K-POPとかでも、BLACKPINKとかが入れたりしてるんですピ。古坂さんも一番最初に買った機材はROLANDだし、一緒にバンドを組んだ高見眞介さんという人も、今のROLAND・ロサンゼルスのトップなんですぴ。その高見君に古坂さんが打ち込みとか教えてもらったっていう、ROLANDとは切り離せないものがやっぱりあるので、今回は「808」というテーマでやりたいなと。

      ──こだわりなんですね。

      ピコ太郎 裏テーマもあって。「PPAP」は1曲でパッといったので、次は「多数だったらどうなるかな」ということなんですぴ。1曲でああなったのに対して、実験として1年間で一気に80.8曲出したらどうなるんだろうと。

      ──どんな反応や広がり方になるのかなと。

      ピコ太郎 本田圭佑さんが「量をやってない人が質を語るな」みたいに言ってたので、「よし、量をやろう」と思いましたピコ。

      ──本田さんの言う「量」って、そういう話じゃなくないですか(笑)。

      ピコ太郎 (笑)。まあでも、古坂さんはすでに作ってある曲が400曲ぐらいあるんですけど、それぐらい増えてくると、だいたい分かってくるらしいんですピ。このプロジェクト用の楽曲は今はまだ70曲ぐらいしかできてないんですけど、そのうち分かってくるものがあるんじゃないかなと。1年経ったら何か変わってるんじゃないかなっていうことで、死力を振り絞って今回やるという感じですピコ。

      ──みんなに聞かれると思うんですが、「.8曲」って何なんですか?

      ピコ太郎 後付けですピ。

      ──あ、きっぱり(笑)。

      ピコ太郎 どうしても「808」にしたかったので、「80.8曲」にしようと。確かに、過去に例がないなと思ったのは、「今回の1曲」って言うじゃないですか。その時に、「1」にこだわりすぎてるなと思ったんですピコ。「今回の1曲」が「2曲」になると、結局は「1曲」の集合体じゃないですか。これはちょっとおかしいなと思って、曲自身の単位を「1」と捉えるのを少し変えてみたいなと。曲の単位を新しく定義づけしたくて、例えばベートーヴェンの曲って「1曲」なのかなと。

      ──そこ行きますか。

      ピコ太郎 ベートーヴェンのアレって、「1曲」じゃない気がするんですぴ。あれは「1曲」っていう名のコンピレーションなんじゃないかと。だからあくまでも「交響曲第1」「第2」とかってタイトルじゃないですか。だから私の曲も「0.8曲」というのを最後に作ってみようかなと。もしくは「0.2」、「0.2」、「0.4」って刻む可能性もありますけど。「0.8曲」っていう概念を、今回ちょっとやってみたかったんですピコ。でも「0.8」って難しいんですピ。途中で終わる曲だったら「0.8」になるのかって話なんですけど、きっとその曲を聴いてもらえれば「ああ、なるほど!」って言ってもらえると思うんですけど、「0.8」なんですぴ。それを聴けば「0.8」だなという曲を思いついたので、これなら「80.8」でいけるなと。

      ──そうなんですか?(笑)

      ピコ太郎 やっぱり映画だって、全てを見せてバッドエンドだ、ハッピーエンドだっていうのはつまらないじゃないですか。映画だって、きっと「1作」じゃない映画もあると思うんですピ。例えば三部作はあれで「1/3」で、つまり33.3%ですよね? そんな感じで、「1曲」に満たないものがバズったら最高じゃないですか。「ああ、あの1曲!」「いや、1曲もないです。0.8曲なんだけど、すごくハマって」みたいな概念ですピコ。Tik Tokで流れるのだって、あれは「0.1曲」とかですもんね。あれを「1曲」とは捉えられないなと思ったんで、「いやあ、0.1曲がハマったんですけど、そこから0.9がハマんなくて……」みたいなことになればいいなっていうことなので、一発目のリリースに「マスマティックス」も入ってるんですぴ。

      ──なるほど。「0.8曲」というのは、「8割ぐらいしか完成してない曲」というのとはまた違うんですか?

      ピコ太郎 そのへんはいっぱいあると思うんですぴ。例えば「ギターがないから0.8」とかって捉えてもいいし、長さかもしれないし。私がいないとか、そういう可能性もありますピコ。

      ──ピコ太郎さんがいなかったら、それは「0曲」なのでは?

      ピコ太郎 でも、インストゥルメンタルは「1曲」ですピ。T-SQUAREさんは歌ってないですけど「1曲」ですから。

      ──まあ、そうですね。

      ピコ太郎 だからそこらへんを考えると、「0.8」という概念を共有するのは相当難しいと思うんですピコ。「いや、『PPAP』だって1曲とは言わないよ」って人もいると思うんですピ。でも全ての数学には前提があるんです。「yを0とする」とか「これを定数とする」「これを素数とする」とかいろいろあるじゃないですか。今回は定数ができたので、定数を込めていくと「0.8」になるなとなると思いますぴ。

      ──なるほど……。

      ピコ太郎 まあ、ここまで大きく言ってますが、そんなに考えてないですピコ。

      ──ああ、やっぱり。すみません、そうだろうなと思いながら伺ってました(笑)。

      ピコ太郎 どうやら僕は後付けがうまいらしくて(笑)。でも「0.8」、つまり「80.8曲」という遊びが、何にしろTR-808へのリスペクトということなので、そこらへんがうまくハマれば楽しいなとは思いますピ。しかもこのシリーズを「Tottemo Release 80.8」と名付けてるんですが、これもうまいこと言ったなと、自分で思うんですピコ。「たくさんリリース」よりも「とってもリリース」だなと(笑)。

      「PPAP」の音作りにはすごくこだわったんですピ、古坂さんが。

      ──TR-808は、それこそグループ名に入れているほどの「808 STATE」という人たちもいるぐらい、熱狂的なフォロワーを生んだ名機でしたよね。

      ピコ太郎 808 STATEは最高ですぴ。

      ──そして「PPAP」が出た頃にも、「実はあの曲、サウンドがすげえ凝ってる」みたいな話がけっこう出ましたよね。あの音はかなり苦労して作られたというエピソードも紹介されたり。

      ピコ太郎 そうですね。808のカウベルと、909の音を薄く入れてるんですけど、30年ぐらい前のあの頃、機材はアレしか持ってなかったんですピ。当時のROLANDのシーケンサーボックス、MC-303とかMC-505とかTR-808とか、あとはサンプルCDとかでも当たり前のように「カウベル」という音が入っていて、「あれが本当の音だよ」ということでやったらしいんですね。ところがこの前、ちょうど808を作った大元の方に、高見眞介君と古坂さんが一緒に話を聞く機会があって。そのご本人は、あのカウベルの音を全く気に入ってないらしいんですピコ。

      ──そうなんですか!

      ピコ太郎 「あれは失敗だ」と。本当はもうちょっと調整したかったらしいんですぴ。バスドラの音もそうなんだけど、当時はスモール・スピーカーしかなくて、いい音が出ないなと。カウベルも、もちろんサンプラーは当時からあったから、「コン!」っていうサンプルを貼りつければいいんだけど、それじゃ後からいじれないからつまんねえじゃないかというんですぴ。どうしてもいじれる形にしたかったたらしくて、そうするとあの形しかなかったと。だからその方は、あのカウベルの音がこんなに持て囃されているのがイヤなんだと。これ、最高じゃないですか! でも、大きいスピーカーで鳴らしてみたら、実は聞こえてなかった低音が鳴ってたっていう。100khz当たりの音がズコンって抜けていて、そこにベースが入り込んで、低音が倍音になってるらしいんですぴ。で、あの音が間抜けと思われてた時代がありまして。いわゆる「今さら808を使ってるのかーい」っていうのが、きっと2010年ぐらいだと思うんですピコ。

      ──そんな感じですね。

      ピコ太郎 ところがもうその時代には南アフリカのダイ・アントワードとか、あそこらへんのミュージシャンがたまに使ったり、けっこうぶっ飛んだヤツらがあえて808を鳴らしてる。まだヒップホップでは808をそんなにいじってない頃で、彼らは「あの音が悪い」って捉えたんですピ。僕は不思議だと思ってましたピコ。あの音悪くないのにと。音が悪いイコール、いわゆる貧困層の人たちが808しか持ってなくて、しかも当時、808は二束三文で買えたらしいんですぴ。

      ──型落ちだったんですね。

      ピコ太郎 金がないから、仕方なく808しか鳴らせなかったヤツらがヒップホップをやったっていうのが、ちょっとAKAIのMPCに近い感じがするんですけど、そこらへんが面白くて。でも、あれをかわいく鳴らすと、普通の人が聴いたららただのゲームミュージックに聞こえるし、ピコピコサウンドになるピ。でも、見た目はイカツいシンセサイザーじゃないですか。そこらへんのギャップが、古坂さんが言うにはすごく面白かったと。激しい曲でやった方がハマるんですけど、あえてあのサウンドで、ノイズも「ツー」ってすごく乗ってるんですけど、「それがまたいいじゃん」ってことで808を選んだらしいんですピコ。でも、基本的にカウベルってスネアじゃない部分に入れるものであって、二拍・四拍で流すのはおかしいと。普通は♪カンカンコンカンカンココンとリズミカルに鳴らしたり、コンコンコンって頭から流していく。ユニコーンさんの「WAO!」とかがそうですよね。「コンコンココン」って流していく。そのカウベルを、スネア部分で鳴らすことにずっと笑ってたんですよ。スネア代わりにカウベルを鳴らすのが面白いと。それをやって、一番最初に見つけてくれたのがDJ KOOさんだったんですぴ。「スネアのタイミングでカウベル鳴らすのはズルいよ!」って。それで自信を持ったので、やっぱり「PPAP」のあのトラックっていうのは、苦労したというよりは、「裏の裏に行ったら表に回った」というだけの話かなと思うんですピコ。

      ──なるほど。

      ピコ太郎 それも含めて、全部がラッキーだったんですピ。これが2016年のことだったり、私のことを全然誰も知らなかったり、ジャスティン・ビーバーが最高潮だったり、トランプさんが一期目の大統領になる前だったりするんですぴ。インターネットもネタがなくて、何にもなかった時代に急に「PPAP」がポン!と来た。それが8月25日。ジャスティン・ビーバーの騒動が9月27日、ちょうど文化祭シーズンで、みんな何か新しいものを探してる時期で。

      ──おお!

      ピコ太郎 古坂さんが言ってましたけど、ジャスティン・ビーバーがツイートした3日後ぐらいにUSJに行ったら、その日は雨が降ってたんですぴ。仕方ないからカッパを着たまま、雨がザーザー振ってる中でごはんを食べるとこに行ったら、いっぱい女子高生がいて、みんな「PPAP」をやってたらしいんですよ。その光景を見て「ネットってすげえ」って思ったらしいんですぴ。映画『キック・アス』のワンシーン、主人公がネットの力で一躍時の人になった、アレみたいな。「こんなに流行って、こんなに世界中が真似しくてれてるんだ!」というのが、あのUSJで見られたと。それもこれも、きっとラッキーだったっていうことだと思うんですピコ。

      ──全てがうまくハマった、みたいな。

      ピコ太郎 そうですね。しかも、意図してハメてるわけじゃないんですぴ。きっと、あれをハメられる人っていないですピコ。ブルーノ・マーズとBLACKPINKのロゼの「APT」が最近きましたけど、あれはスター同士の共演ですし。全く無名からだと「江南スタイル」があって、「ベイビーシャーク」があって「PPAP」があって、その次はまだ来てない気がしてるんですピ。「THE FOX」、フォックスダンスはもっと前ですからね(注・2012年頃)。そういう意味でもラッキーだったし、“ファーストワン”というより“ラストワン”なのかなという気もしないでもないんですピコ。でもそれは、じゃあ僕の力かというと、全くそうじゃないので、これも運だったかなという感じがするんですぴ。

      新衣装のコンセプトは……「そっち系かわいい」?

      ──でもそこから、こうして10周年を迎えようとしているわけで。

      ピコ太郎 そこからはもう、このデカい会社がいろいろと引っ張って引っ張って、いろんなアレンジをし、古坂さんはワガママですからいろんなことを「あれやれ」「これしろ」って言い出すのをみんな必死こいてやって。基本的にTikTokもYouTubeも、つくコメントの8割から9割は日本語以外だったので、エイベックスには海外の支社がいっぱいあって対応できると言うのも大きかったし、レーベルもアメリカ、ヨーロッパ、アジアという風に全部分けて。やっぱりレーベルがないと難しいじゃないですか。そこでエイベックスが一斉に頑張ってくれたぴ。その後「PAPP」に関わったスタッフは社員総会で表彰されてますピコ。そのへんがこれまたすごくラッキーで、エイベックスじゃなかったら10年は持たなかったですぴ、これは本当に。

      ──体制的にもバッチリだったわけですね。

      ピコ太郎 あと、10年もったというのは、当時スタッフと一緒に決めた「ピコ太郎ルール」があるんですけど、それをみんなが確実に守ってくれた結果ですピコ。

      ──プロモーションとかでも「こういうことはしない」とか、そういう決まりがあるんですね。

      ピコ太郎 そうですね。基本的に僕は「反・反社」なので、基本的には粗暴なことはしないということ。見た目が怖くて大きいですから。子供たちと老人と動物には優しく、他には厳しくという感じで、いろんなルールを決めまして。あと、こういうトーク系の仕事は、私はやっぱり得意じゃないので。やっぱりシンガーソングライターであって芸人じゃないので、トークはそんなにうまくないピコ。

      ──全然苦手そうじゃないですよ(笑)。

      ピコ太郎 いや、こういうところでレコーダーに向かってはうまく言えるんですけど、MCではうまいこと言えないピコ。

      ──そうですか(笑)。そういえば、今回は衣装も変わってるんですよね?

      ピコ太郎 そうなんですぴ! これね、アイドルの衣装をメインで作っている雪乃さんという方がいまして、その方に今回古坂さんが、「ヤ●ザかわいい」というテーマでお願いしたんですピコ。今って「キモかわいい」とか「オタクかわいい」とか、いろいろあるじゃないですか。これまた新しい提示で、「ヤ●ザ」っていうワードは海外の人にもすごく浸透していて、『ONE PIECE』のボルサリーノとか、北野武さんの映画とかもすごく人気ありますピ。ただ、この「ヤ●ザかわいい」という言葉が大丈夫なのか。これがピコ太郎ルールに反するならば変えますけどね。まあ、アイドルの衣装風なヒラヒラも織り込んでもらって。

      ──いいですね!

      ピコ太郎 雪乃さんは本当に衣装にかけては百戦錬磨の方なんですけど、制作中にひと言「困りました」って言ってたんですぴ。「どうしましょう、正解が見えません」って。そんな中でこういう感じに仕上げていただいて。

      ──ではあとは、そのコンセプトを指す言葉がうまく見つかれば。

      ピコ太郎 どうしようかな……「そっち系かわいい」とかね。「あ、そっち系?」みたいな。そうだ、「そっち系かわいい」でいきましょう。決まりピコ!

      ──しかし先ほどから、情報量がものすごい多いですよね(笑)。これが普段からだと、スタッフの方はさぞかし困るだろうなと思いながらお聞きしています(笑)。

      ピコ太郎 (同席したスタッフに)でも、大変なのは僕じゃないでしょ? 古坂さんだよね? (無言のスタッフを見て)僕も古坂さんに似てきたみたいですピ(笑)。

      ──そうやって、思いついたらやらずにいられないということなんですよね?

      ピコ太郎 だって、今やらない理由ってないじゃないですか。一般の人でも普通にチャンネルを作って発信している時代に、なぜプロがやらないんだってことなんですピコ。さっき、本田圭佑さんの「量」と「質」の話をしましたけど、「クオリティ」って「量」ですからね、やっぱり。だから常に量は提供していかないといけないなと思ってて。それに、思いついちゃうんですぴ。僕っていうよりも古坂さんなんですけど、毎日奥さんに言ってるらしいんですピコ。「これとこれをやりたい」「あれやりたい」って。言わないと忘れちゃうので。

      ──そういう方なんですね。

      ピコ太郎 「PPAP」を出した頃から言ってますけど、ファーストインスピレーションを超える興奮ってないんですピ。「あっ!」っていう。この「あっ!」を、人はきっと見逃していくんですピコ。「無理」とか「お金かかる」とか「人がいない」とかで。でも今の時代、ネットがあり、AIがあり、YouTubeがあって、できないことはほぼないので、「できない」っていうのはきっとただのメンツとかプライドとか契約だけの話ですぴ。そんなの別に人間が決めたことなので、やっぱりできることは全部やっちゃった方がいいなということで、今回は物量勝負なんですピコ。

      ──物量勝負(笑)。

      ピコ太郎 でも、1曲1曲にはものすごく時間と手間がかかってるんですピ。手間暇かけたこういう曲ってムダだなって、みんな思うでしょうけど、これが今はAIとアイデアでできる時代になったので、それは分かってもらえるかなと思いますぴ。

      最後まで走り切れたら、いい子いい子してほしいピコ(笑)

      ──そして、その80.8曲が最終的にアルバムにまとめるんですよね?

      ピコ太郎 今の時点では、毎月のリリースは配信なんですが、最終的にアルバムなのかプレイリストなのか。ただ、並べても意味があるものにはなるというか、逆に言うと、並べないと意味がないものだと思うんです、今回は。だから並び順考えなきゃですピ。あと、イベントを武道館(2017年3月)以来やってないので、やっぱり久しぶりにそういうのもやってみたいなとは思ってますピコ。まあ一年あるので、状況がどうなるか分かんないんですぴ。急にクビになる可能性もありますピコ。

      ──いやいや(笑)。

      ピコ太郎 とりあえず、やりたいことは山ほどありますぴ。コロナ以降やっていない海外でのライブもまたやりたいピコ。ということも踏まえて、1年経った時に10周年を……普通は10周年の時点から活動するんですけど、10周年に向けて活動しておくというのもいいなと。10周年を惰性でいくっていう(笑)、そういう感じも面白そうだなと思ってはいるんですピ。

      ──だって、スタート時点からこんな感じじゃないですか。ここから1年間、この勢いでやるのは……

      ピコ太郎 無理だと思うんですピコ。

      ──無理ですか(笑)。

      ピコ太郎 途中で急に「休みたい」って言い出すと思いますぴ。ただこう見えて、テストに向けて数週間前から勉強していくタイプだったらしいんで、古坂さんは。だから準備はしていますピコ! とりあえず古坂さん曰く、「残りあとちょっと」らしいんですピ。

      ──楽曲も70曲まではいってるんですよね。

      ピコ太郎 ただ、問題はレコーディングとマスタリングと……いろいろあるんですぴ。とりあえず今、古坂さんは何をレコーディングしたか、聞かないと覚えてないぐらいの感じらしいので。AIが発達してくれて、これによってどれだけ助かってるか。ギタリストもドラマーも呼ばなくていいピコ。ただ、やっぱり僕は「ダンス&ボーカルグループ(1人)という感じなので、踊りも考えていかなきゃいけないピ。……1年もたないと思うんですピコ……。

      ──いえいえ、お願いしますよ(笑)。

      ピコ太郎 最後までもったら褒めてほしいですぴ。実は、裏ではチャレンジなんですピコ、「最後まで行けなかったらゴメンね」っていう。これが1年もつのかな……。

      ──ぜひぜひ、もつようにお願いしたいです。

      ピコ太郎 もつようにね! 僕はもう歳なので、本当に休み休みやらなきゃいけないピコ。

      ──先ほど、「Shin-Pen-Pineapple-Apple-Pen」の、製作途中段階のMVを見せていただいたんですが、確かにAIが駆使されてましたね。

      ピコ太郎 あれも0.8なんですけど、SEIIIRUさんというAIの道10年というAIクリエイターさんと一緒にやっていますぴ。「チャンチャンコ~KANREKI60~」のMVを出した時に、古坂さんに「ありがとうございます」っていう連絡が来たんですピコ。「メジャーレーベルのMVで、AIをここまで使ったのは初めてだと思います」と。じゃあ一緒にやりませんかって言って、本当に時間がない中でパーッと作ってくれたんですピ。

      ──そうなんですか! すごい時代ですね。

      ピコ太郎 「チャンチャンコ~KANREKI60~」のMVはやなぎさわけんじさんというAIクリエイターさんと一緒に作りましたぴ。まあ全部で80.8曲あるので、これからどうなっていくのかはまだちょっと分からないですけど。それとフルAIもいいんですけど……フルAIって、「インタレスティング」的には面白いんですけど、ファニーじゃないんですピコ。「バーチャファイター」の初期を感じるというか。

      ──分かります(笑)。

      ピコ太郎 あの時、「ああ、3Dってこんな感じか」ってみんな思ってましたぴ。でもそこから「あれ、鉄拳すげえ!」「バーチャの新しいヤツ、すげえ!」という感じになっていって。でもその初期ぐらいに、「人間と混ぜたら面白いな」と思ったらしくて。やっぱり今は「混ぜ方」が大事ですピ。今回の「Shin-PPAP」も、こういう混ぜ方をすればAIも使えるよという見本になったらいいピコ。CGの混ぜ方に近いんですピ。

      ──確かにそうですね。

      ピコ太郎 ぶっちゃけ言うと、CGなんですピ(笑)。ただCGみたいに、100人が半年間かけていたものが、AIだと天才1人がいればできるっていう面では、やっぱりすごく進歩してますピコ。今回なんて、2週間とかで作りましたピ(笑)。その分、一晩中生成してましたピ。

      ──この先も楽しみですね。

      ピコ太郎 もうできているものもありますピコ。80.8曲のうち、50曲ぐらいはMVが公開されると思いますぴ。

      ──なるほど。では最後に、改めて10周年に向けての、今の意気込みをバシッといただけますか?

      ピコ太郎 最後まで走り切れたら、みんないい子いい子してくださいピ。今、すごいことを考えてますので。これが最後まで行ったら、まずとりあえずよしかなと。ピコ太郎の10周年であり、10年間の総決算になると思うので。これができたら、次にどうするかはまだ決めてませんピコ。とりあえずここを最後まで乗り切りますぴ。応援してくださいピコ!

      ──楽しみにしています。ありがとうございました!

      撮影 長谷英史

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      高崎計三

      ライター

      高崎計三

      1970年2月20日、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年より有限会社ソリタリオ代表。編集&ライター。仕事も音楽の趣味も雑食。著書に『蹴りたがる女子』『プロレス そのとき、時代が動いた』(ともに実業之日本社)。